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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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冰(こおり)のエアポート

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時折風が吹くと、博之は全身に力を入れずにはいられなかった。
体を寄り添えていた寿美代は、そのことにも気が付いた。
(私はダウンを着ているから顔が冷たく感じるぐらいで、体は割と平気なのに、彼は風が吹く度に体を硬直させているみたい)
寿美代は自分のマフラーを博之の首に巻きだした。
「あっ。いいですよ。そんな」
と、博之は言いかけたものの、寿美代の温もりのあるマフラーが首筋に巻かれると、寿命が延びたみたいに感じ、しかもとてもいい匂いがして、もう外したくなくなってしまった。嬉しく思いながら、
「申し訳ありません」
と、寿美代の目を見て言った。
「何言ってるんですか。木田さんもう限界でしょ」
寿美代は話しながら、マフラーの余った先端を博之の背中を覆うように被せた。
(なんて優しい人だ。僕みたいなおっさんに)
博之はそう考えると、急に彼女のことがもっと知りたくなってきた。

「彼氏さんとは、遠距離恋愛されてるんですね」
「ええ。まあ」
寿美代はちょっと気まずい返事をした。このタイミングでこんな質問をされて、博之が自分のことを意識し始めていると解釈してしまったからだ。
「僕も今、気持ちが折れそうで思ったんですけど、きっと彼氏さん、あなたにこの環境の厳しさを分かって欲したかったのかな」
「どうしてですか?」
「お仕事で相当辛い思いされてるんだと思いますよ。でないと、この時期に来てくれとは言わないでしょ」
「そうかしら。単に毎日退屈だったからのような気がします」
寿美代は分かっていた。ここに呼ばれたのではなく、自分が誘いに乗ってしまっただけだということを。