それから
何しろ、年に何度か死体さえ浮かぶ、マニラの川沿いで野宿の経験も有るんだ。魚市場のゴミ溜めで一晩過ごした後など、2~3日、匂いが消えなかった。
この国に有る汚れなど、お前達の腐った根性より遥かに綺麗だ。
などと、関係ない事まで含めて、心で呟きながら、仕事さえ覚えればこんな処は、おさらばだと・・
すべて返事は、『はい、分かりました。』で通した。
そうこうする間に、半年が過ぎた。
俺は、最初の約束通り、ばあちゃんの墓参りの為に、3日間の休暇を申し出た。すると、
「丁度、大きな仕事が、舞い込んだけん、休みなど認められんわ。」
とのお言葉。加えて、
「まあ、辞める気なら行ってもええけど・・」
と、薄笑いと共に、社長が、みんなの前で・・
(嘘吐きは、泥棒の始まりだぞ、この野郎!)
と、思ったから、この社長を嘘吐きにしない為にも、
「じゃあ、今日で辞めさせて頂きます。」
と、さっさと帰宅した。
途中、何度も携帯が鳴っていたが、俺の方からの用事はもう無いから、無視した。
ばあちゃんの命日には、まだ2週間あったが、俺は、すぐに墓参りに行く事にした。
命日も大切だけど、それよに何より、働かねばならない。兎に角3日で帰って来て、職探しをしなければ、あの大家の婆さんに、折角修理中の家を追い出されるから・・