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宵々山の情事

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視線でたしかめつつも、危険ラインを越えそうだから、冷や水路線へ転換だ。
「もうほんとに、部下の家で、何をするのですか」
部長の自覚を呼び覚まそうとする、興奮が冷めてくるに違いない。
「見たくありません、しまってください」
「頼むから、ちょっと咥えてくれ」
男の常套句ではある。咥えるのは、男には女を征服するという楽しみに浸れるが、この場合、女は最後までもつれないための自衛手段である。ほんとに男の錯覚は根深い。
女は、男が哀願し始めると、ここからは、主導権を握ることができるはずだと判断した。
「みっともないから、やめてください」
「あいつには内緒にするから」
しまった、と女は思った。
部長と恋人が飲み友達で、ここまで親しいとは、知らず、失敗である。
「すぐ終わるから」
なかなかうまいことを言う。部長との今夜のこの事件は割り切れれば人間関係の武器になる、そして、早く済ませた方がよいとも思った。
「彼とは別でしょ、部長にサービスする理由がないわよ」
「これは浮気やな、もう」
恋人とは同期なので付き合いが長いが、肉体関係になってから、10年近くになり、だらだらと事実上の婚約関係が続いている。優柔不断な人物かもしれない。
「浮気ではありません」
なぜか標準語が出てくる。

「3課のやつが、君と寝たと言ってたよ」
パンチを食らったボクサーみたいな心境である。すぐに体勢を立て直さなければと思ったけれど、頭も体も一瞬、停止状態になり、良いアイデアが浮かばない。複雑な人間関係の中でストレスを抱えているのに、と恨めしくなる。どうして、男たちは、女を酒の肴にするのかと、怒りを覚えてきた。
「それは一度だけですよ、ほんとに」
「あいつは知らないみたいや」
「もう、」
とうめく。男は抑え込んでくる。どうしてもやりたいのだろう。油断していた自分、自信過剰な自分をふりかえる。
「今晩のことも、内緒にしてね」
女は男にお願いするのだった。立場の逆転をごまかすには、甘えるのが得策だ。ふしだらな女に思われたくない、彼とのことは、双方の両親にあいさつした仲だ。
「わかった、わかった」
「一度だけですからね」
女は鼻にかけて媚びを作った。
「そんなに真剣に言われたら、小さくなってしまいそうや」
「いいやん、小さくなったら、おとなしく帰ってください」
男は繊細だ、議論すると性欲が飛んでしまうようなところがある。私はそうではないけど、心の中でつぶやいた。
男は、柔らかくなった男根を握らせて、
「手で刺激してみてくれ」
女は、玉を左手で支えるように撫で、右手は茎の根元のあたりを、緩急をつけて握り込んだ。
「うーん、いいな」
「うまいな、感心するわ、商売女みたいやな」
「そんなにうまいですか」
「いや、うまい、うまい」
女は手でいかそうと懸命だったが、50歳代の遊びなれた男は簡単には発射しない。
「手ではいかないみたい」
「本番させてくれ」
「だめ」
と、女はきっぱり拒絶した。この勢いを止めなければと思案した。
「口、かぶせるだけ、してみて、頼むから」
「だめです」
「何を言ってるんや、咥えるのが好きなくせに」
女は笑った、だから何なのよ、と。
笑われて、男は自信を失いつつ、反撃に出た。
「もう濡れてるんやろ」
「さあ、どうでしょう」
「いつもこんなんか、不感症とは違うよね」
「部長、失礼でしょ」
「いやいや、いい女やと思う」
「味見してみます」
「するする」
「言うこと聞いてくれますか」
取引きしようとする自分を発見する。取引きと言いながら、男根の性能を試してみたくなったのだ。自分自身の性能も。セックスさせるのも、どこか取引きのような要素があるだろう、そういう言い方したら、女友達から、まるで男みたいと指摘されたことを思い起こした。
「なんやろか、ごちそうか、ネックレスか」
「モナコに行きたいの、連れて行ってくれますか」
「うーん、モナコね、行って来たら、お小遣い、あげるから」
「わあ、やった」
もう二人は、恋人気分である。キスを何回か、繰り返す。次のステップのための定石だ。男はあくまで紳士的だった。

男が、男根を入り口に充てる。
「脱毛は、あいつの趣味か」
「部長ね、脱毛って、女の子には普通のことなんですよ」
「ふーん」
部長は納得がいかない風だが、男根を女芯の周囲にこすりつけては遊んでいる。
「毛がないのはいいなあ」
「気に入りましたか」
「気に入った」「あふれてきてる」
 男はその都度、感想を述べて、女を刺激しようとする。
「ほんとにいやらしい女やな」
「いやらしいですか」
と女は聞き返す。
「いやらしいわ、ほんまに」
男が女の言葉に重ねてくる。
「それで、ごしごししてください」
女が挑発する。男根がこころもち膨張するように感じられた。
「ごめん、スキンないかな」
「困った人ですね」
女は枕もとの引き出しから、出して、男に渡す。
「ちょっと小さいかな」
とつぶやきながら、男は自分で装着する。

挿入後も、女は言葉を投げかけ、男を挑発した。
「太くて、長くて、硬い」
女にほめあげられて、男には自信があふれだす、パワーが漲ってくるのが分かる。
「きみはなあ、変わってるな、商売のこでも、いてないなあ」
「そうかしら」「誰と比較してるんですか」
女はもう男に答えを求めず、攻勢に入る。
「奥に突っ込んでえ」
「奥にか」
女は男の視線に合わせて、にらみつける。部長は目をそらす。
「ゆるくないですか」
「ぴったりや、いい」
二人とも、体は合っていると、確めあった。
スキンがあるから、女は気分的にゆったりとしてきて、楽しめるのだが、動きが激しくないのはつまらない。
「暴れてください」
男は、女の言葉の一つひとつに感心した。初めてのタイプだった。こんなに遊びなれている女だとはまったく思わなかった。
女にねだられて、気分が盛り上がる。
「ええ女やな、みんなが褒めるのが分かるなあ」
体が反応しあい、言葉が性欲を刺激しあう。
「なかにいっぱい出していってください」
女が腰を揺すりだす。抜群のテクニックだ。男は発射を懇願されているようで、また、どこかサディストの心地にとらわれて、男根の動きを激しくし、これまでにない興奮の頂点に達しつつあった。
「私の使って、すっきり、してください」

絶妙のタイミングで、女は男をあおりたてた。
しかし、ここで発射するのはいかにももったいない、男はキャリアのある所を示さねばと話題転換する。女の反応は穏やかであるが、芯からのものであるということが分かった。ともすると、女は大げさに反応する傾向がある。誤解があるとは言え、これは互いにとって不幸なことだと思う。
男は、これまでは内科医の処方であったが、外科医の出番であると決めた。女もきっと楽しんでくれるだろう。
「便所か、お前は」
女を罵った。危険な賭けだったが、女は知的ゲームに応じてきた。
「便器です」
女をマゾに追い込むのだと、男は全エネルギーを女の芯に注ぎ込んだ。これは面白い展開となる、そうあるチャンスではないと男は喜んだ。
「私は、公衆便所ですと、言ってみろ」
「わたしは公衆便所です。」
「朝もね、夜もね、出しに来るのです」
作品名:宵々山の情事 作家名:広小路博