無人島ナウ!
康平は、「よし、木の槍ができた。ナイフもできた」
裕也は、「あさり三十個採れた」
健二は、「ティッシュが焦げ始めた。火が点くかも」
康平は、「健二、息を吹け。ティシュに息を吹くんだ」
「フーフー火だ。火が点いた」
「燃やせ。この枝に火を起こせ」
「よし、燃えてく、燃えてく」
「やったあ、これであさりが食えるぞ」
健二がしばらく火を見ていた。「今何か言った?」康平が言う。
「いや何も」健二は言う。
裕也が、「何か物音がしたけど、その茂みから」
「ガサガサ」
そこから現れたのは、体長八十センチくらいのワニだった。子供のワニだろう。
「ギャアーワニ」裕也が悲鳴を上げる。
健二「どうしよう。海に逃げようか?」
康平は、「馬鹿、ワニは水の中で獲物をつかまえるんだ。泳げるんだよ」
「ギャアー」裕也は騒ぎ、持っていたあさりとフィギュアをまき散らす。そこへワニが走ってきた。
「ギャアーワニ怖い」
ワニはまき散ったあさりを貝ごと食べている。
「ジャリジャリ、ガリガリ」
健二は「ああ、俺達のあさり!」
そしてワニは裕也のフィギュアも食べたが、「ペッ、まずい」と、言わんばかりにワニはフィギュアを吐き出した。
そこにあったのは無残にも形が変貌したグチャグチャのフィギュアだった。
「ああ、俺のハニーライブのフィギュアが!」
そして裕也は槍を持ち
「おのれ、俺のハニーライブのフィギュアを!殺してやる!!」
そう言ってワニに向かって行った。槍でワニを突き刺す。
「おのれ、おのれ、殺してやる。殺してやる」裕也の目の色が変わっている。
康平も、
「裕也が切れた。でもいいぞ。裕也。俺達も突き刺すんだ。三人でワニをやっつけよう」康平も健二もワニを槍で突き刺した。
「この、この」
「この野郎、この野郎」
しばらくしてワニは全く動かなくなった。ワニは息絶えたようだ。
「死んだようだな」健二は言う。
康平は、「ワニ食おうか?」
裕也は、「ええ!ワニを?ワニの形してるじゃん。これ食うの?トカゲより気持ち悪いよ」
健二は、「いや、ワニ肉は美味いって聞いたことがある」
康平は「よしTカードで木のナイフは作ってある。うーん、切りにくいけど、なんとかワニをさばけそうだ。
健二は「よし、いいぞ、康平」
そうしてワニ肉を火で焼いた。焼けた頃康平が、
「まず俺から食べてみる。モグモグ……」
健二は「どうだ康平?食えそうか?」
裕也は、「ああ、ワニ食べてる、ワニ食べてるよお」
「美味い」康平は言った。健二も、
「じゃあ、俺も、モグモグ……美味い。裕也も食ったらどうだ?」
「ええ、ワニを?」
「嫌ならいいんだよ。お前あさり食ったし」
「食べるよ。食べないと死んじゃうもん。モグモグ……」
裕也は顔をしかめながらワニ肉を食べる。
「美味い」裕也は言う。みんな「美味い、美味い」高らかに笑った。
「ハッハッ。美味い」
健二は「ところで、かば焼き君今なら一枚十万円に値下げしたんだけど買う?」
「買うか!」と康平。
そして「しばらくは食料に困らないな。でもここは危険だ。これからは木の上で寝よう」康平はそう言って、その晩から三人は木の上で寝ることにした。
次の日が来て、健二と康平と裕也目が覚めた。
「おはよう。ああ、朝日が……」康平が言う。
「綺麗だなあ」健二も言う。康平はあることに気がつく。
「携帯が圏内になってるどういうこと?」
「一一九番かけるんだ」
「分かった。ツーツー電波が届かないとこだって、日本までは届かないか」康平は言う。
「でもメールはできるんじゃないか?試してみろ」
「ああ、山形の親父にメールしてみる。“親父、今俺達無人島。GPSで助けてくれ」
そう打ってまず送信した。
「よし、次は何を打とう。ああ、もう携帯が圏外に」
健二は、
「また、打てるかもしれない。携帯が圏内になるのを待とう」
裕也は、「でもなんで携帯が使えるようになったんだろう」
健二は、「俺聞いたことがある。神的な確率で電波が雲と雲に反射して、ものすごく離れた距離に電波が届くことがあると」
その頃山形で―
「おお、この間康平に言われて買ったパソコンにメール受信てなってるべ」
「でかしたぞ大助。メールさには、なんて書いてんのさ」
「GPSで助けてくれだと」
「GPSってなんのことだべ?学、おめえ、PC9801を駆使していた男っていうからに、なんか分がんだろ」
「分がんねえ」
村の一人が言った。
「オラGPSって聞いたことあるぞ。(G)グレート(P)ペッパー(S)ステーキ。隣り町のハイカラなステーキハウスでGPSって広告が出てたぞ」
「どういうことだんべ?」
「無人島でステーキを食べようとしてるってことでねえか?とにかく返信するべ」
そして無人島―
康平と健二と裕也は携帯を見ていたが、一向に携帯は圏内にならなかった。火があるので、ハンカチと石とカプセルで海の水を蒸留水に変えた。
「よし、水と肉は確保した。携帯で連絡が取れれば助かるかもしれない」その晩はまた三人とも木の上で寝た。