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無人島ナウ!

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 そう言ってあさりを見せた。康平も、
「たしかにあさりだ。みんなであさりを採ろう」
「よし」健二もそう言い、みんなであさりを探した。二時間くらい探しただろうか……
「やった、みんな合わせて二十個くらいはある」裕也は言った。
「でもどうやって食べよう」康平が言うと、健二は、
「貝だから火を通さないと」
 裕也は、
「どうやって火を起こす?」
 そう訊いたので康平は「黒いものがあれば、太陽の光で火を起こせるかもしれない」
「黒いもの?俺ないよ」
「俺も」二人は言った。康平は、
「一つだけある」
 健二は、「何?何?生きのびないといけないんだ。早く教えろよ」
「健二のTカード。それを半球状にしてこのティッシュに向けて反射させ光を集中させる」
健二は、「はい、Tカード。理屈は分かった。しかし、どうやってTカードを半球状にするんだ?」
「それはTカードをバキバキに折って、なるべく多角形のようにして……」
「今なんと?」
「だからTカードをバキバキに折る」
「そんなことできるわけないだろー」健二が半ば怒鳴り声で言う。
「二万ポイントだったな。日本に帰ったら二万円返そう。俺と裕也で」
「そういう問題じゃないだろ。二万ポイントを二万円で売るなんて」
 康平は「いいかよく聞け健二。お前の岩崎弥太郎の理屈で言うと、確かに時と場所によって物の値段は変わる。だが今ここ無人島ではお前のTカードは何の値打もないんだぞ。せいぜい十円がいいとこ」「康平、健二」裕也は言う。
「俺の悪口は百歩譲っていいとして、俺のTカードの悪口だけは許さん」
「いいから、そのTカード貸せ」
「ああ、」「康平、健二」
 康平はカードを折る。バキバキ「ギャアー」と健二。
「まあ、そんな騒ぐな。健二」
「太陽の光が反射して、このティッシュに集中するはず」
 しばらくずっと待っていたが、ティッシュは焦げ付きさえしない。
「おい。全然、火起きないじゃないか」と健二。
「まあ、そう焦るな」と康平。
「康平、健二」と裕也。
結局日が傾き夕方になったが、火が点かなかった。健二は、
「どうしてくれる。俺のTカード。日本に帰ったら絶対裁判起こしてやるからな。ポイントの被害二万円。精神的ダメージ四千万円……」
「まあ、健二怒るな」
 裕也は、「康平、健二」
「康平、健二、それより俺のフィギュアを使って火を起こそう」
「フィギュアで火が起きるわえないだろ」
 健二は半ば泣きながら言った。
「いや使うのはフィギュアじゃなくフィギュアの入ってた、このカプセルだよ。これは透明の半球、光が集中するはず。このカプセルを使って」
「もっと早く言え!」と健二。
「よし、カプセルで火を……」
 三人はカプセルで火が起きるのを待った。
「ティッシュが少し焦げ付いた。あと少し」
「でも駄目だ。太陽の光が弱すぎる。夕日じゃだめだ。昼の光でないと」
「しょうがない。あさりは明日にするか」
「そうするしかないな。ここのあさりを隠しておこう」
 そして夜になり三人は無人島の砂浜で寝ることにした。 
 朝日が昇り、
「おはようみんな寝れた?」健二は言う。
「うん、寝れたんだか寝れないんだか、でも十分疲れはとれたよ。あれ裕也、早くから起きてたみたいだけど」
「うん。なんだか、朝からお腹をこわしちゃってね。またちょっと草むらに行ってくる」
「ああ、気を付けてね」健二は言う。
 そして健二はあることに気づく。
「ああ、あさりがない」
「本当だ。あさりが……」康平も言う。
「ああ、まいった。まいった。お腹が……ええ?あさりがないんだって?やっぱりなんか小動物が」
 健二は、「そんな、あさりがなくなるなんて……」
裕也がまた、
「ああ、またお腹が、ちょっと行ってくる」
「ああ、気をつけろよ」健二と康平が言う。
「まいった。まいった」また裕也が戻ってくる。健二は、
「あさりなくなる……裕也下痢する……」
「うーん。そうだな。まいった。まいった」裕也が言う。
「あさりなくなる……裕也下痢する……」
「あさりなくなる……裕也下痢する……って、お前あさり食ったろ!」
 裕也は、「いや食ってないよ。きっと小動物が……」
 健二は言った。
「そう言えば聞いたことがある。南国のあさりは生で絶対食ってはいけない。恐ろしいピカリ菌というものが入っていて……」
「食ったらどうなるの?」裕也が尋ねる。
「死ぬ」健二は言った。
 裕也は「そんな、助けて、死にたくないよー、ゲーゲー」必死にあさりを吐き出そうとする。
「ばーか、ピカリ菌なんてみんな嘘だよ」
「そんなずるい」裕也は言う。
「それより、今お前があさりを食べたことが証明された」
「くそ、はめたな!」
 康平は、
「それより、火を焚こう。またあさりを探せばいいじゃないか。裕也は罰としてあさりを少なくとも三十個以上拾ってくれ。健二は引き続き、カプセルでティッシュに火を起こしてくれ。俺は健二の折れたTカードが刃物のようになっているから、これで木を削る。何かの武器になるかもしれない。小動物もいるかもしれないし」 
 三人で手分けして、それぞれの担当に着いた。

二時間後……
作品名:無人島ナウ! 作家名:松橋健一