小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

無人島ナウ!

INDEX|7ページ/7ページ|

前のページ
 
 
 また朝がやってきた。三人で朝日を見ようとしたとき、康平は言った。
「また携帯が圏内になってる。メールも届いてる。なぜ朝日が昇ると携帯が圏内に……」
 健二は、「とにかくメールを読んでくれ」
「分かった。ええ、“康平無事か?ステーキはよく焼いて食べないとお腹こわすぞ”って何だこのメール。とにかく打つんだ。“家を建てたい。火はある。建て方教えてくれ」
 しばらくして「今度は返信が来たぞ。親父キー打つの遅いな」「何て書いてある?」
「ええ、“康平もやが大事だ。そして丈夫なむなぎときりずまはあとあと面倒くさくない”」
「何だこのメール。分かるか?」健二と裕也に見せた。裕也は、
「もやっていうのは、萌えっていうのが言いたかったんじゃないかな」
 健二も言った。
「むなぎっていうのは、むなげ、きりずまっていうのはあとくされなくいつでも手を切れる萌え萌えの人妻である不倫相手、その方があとあと面倒くさくない。そう言いたかったんじゃないかな、不倫するにはたくましい胸毛っていう」
 康平たちは、「今不倫している場合じゃない」とメールしたと同時に携帯が圏外になった。康平は、
「いや、でも、いつも親父が酒を飲みながらこの言葉を使っていたような。おそらく全然違う意味だろう。大工の話なんて全然聞いてなかったからな。くそ、大工の息子のくせに、家一軒、建てられない。またあの木の上で寝るのか。でもどういうわけか、朝日が昇る瞬間、携帯が圏内になるらしい。不思議だ」

 その頃山形で―
「今不倫している場合じゃないだと。康平のアホンダラ。意味通じてねえべや。でも康平さはたまげたスピードでメール打つべや。オラほうさはキーを打つのも時間かかるべよ」
「大助、おめえんとこの康平もたまげた息子だ」

 またまた無人島―
 三人はまた、あさりを捜して蒸留水を作った。そして三人があさりを捜していると、また茂みからガサガサ音がする。それを見た三人は心臓が止まる思いだった。三人の前に現れたのはなんと、体長二メートルくらいのワニだった。
「きっと、あの俺達が食べたワニの母親ワニだ」
 裕也は「ギャアー殺される」
 康平は「木の上へ。木の上へ逃げるんだ」
 三人は木に登った。木の下で母親ワニは三人を食わんばかりに口を開け、待ち構えている。「どうしよう殺される」と健二。康平は、
「俺に考えがある。ここに槍が三本ある。引力の力でまず俺が母親ワニに向けて槍を刺して飛び降りる。次に健二。そして裕也」「分かった」健二は言った。
「いくぞ」康平は飛び降りた。グサリ。よし刺さった。
「いけ健二」
 次に健二が飛び降りた。グサリ。
「まだ、生きてる。でもあとちょっとだ。裕也とどめを!」康平は言った。
「ヤダ」裕也は言う。
「何言ってるんだ、裕也。ワニ、まだ死んでないんだ。俺達食われちゃうよ。裕也飛び降りろ」
「ワニに食われて死ぬくらいなら木の上で餓死する」
「お前卒論でチームの輪、自分を犠牲にする魂。自分を投げ出す勇気とか言ったろ」
「でもワニこわい」「裕也頼む」
 そのときワニは意識を取り戻し、そばにいた健二に食いかかった。
「ギャア助けて」健二が叫んだとき、裕也が、
「うわあ、お母さん。ごめんなさーい」
 そう言って槍を握り、すごい形相で木から飛び降りた。
 グサリ!!!
 母親ワニに突き刺さり、母親ワニは完全に息絶えた。
「死んだな。助かった」健二は、
「裕也、貴様自分だけ助かろうと思って……」康平は、
「まあ、飛び降りたからいいだろ。とにかく三人無事で良かった。そう言って三人は母親ワニの肉も少しずつ食べた。
「これ燻製にできないかな?明日にでもやってみよう」
 そう言ってその晩は三人とも木の上で寝た。
 次の日三人が朝日を見に行った。「あれっ?」健二が言った。
 康平が「何?」
「なあ、あの海の向こうに見えるのなんだ?」
「どこ?」裕也が言うと、
「船だ」と健二。康平も「本当船だ。俺達助かる。火をもっと強くしろ。叫ぶんだ」
「オーイオーイ」
 康平は叫びながら、
「携帯も圏内だ。俺は親父にメールを打つ。
「オーイオーイ」
“親父助かるかも。俺はいつも親父の大工の仕事を馬鹿にして、俺は何も分かってなかった。このメールが届くか分からないが、親父が汗水流して働いたお金で俺は育ったんだ。親父本当にごめん」
「オーイオーイ」
 山形で―
“康平。オラおめえがパソコンの仕事に就いたこと、これっぽっちも認めながった。クーラーの効いた部屋で何が仕事だ。そう思っでた。でも、おめえもおめえなりに、すごいことやっでたんだなあ。難しい言葉知ってんだなあ。これが届くか分がんねえが、必ず生きて帰ってこい」
 無人島―
「オーイオーイ」
 七、八メートルくらいの小さな船が無人島にたどり着く。人も乗っている。健二が、
「キャンユースピークジャパニーズ?ヘルプミー。ヘルプミー」
 船のおじさんは、
「何してんだお前たちこんなところで」
「えっ!日本語が通じる。俺達日本に帰りたいんです」康平が言った。そのおじさんは、
「ここは日本だぞ。伊豆諸島の父島と母島のそばの子島と言われている地図にも載っていない小さな島だ。紫外線のせいで南国の動植物がいる。危険だぞお前達」
「じゃあ、何で携帯が圏外に、そして朝日のときだけ圏内に……」
「ここの島の近くの島で実験的に電波を流しているので、このあたりは電波障害があるんだ。父島と母島の住民が朝のラジオ体操のときに困るから、朝のラジオ体操のときだけ、実験の電波を切っている。さあ、お前ら船に乗った乗った」
 
 三人は無事東京に戻り、旅行会社の返金により、しかしもう島は懲りたので、飛行機でニューヨークに卒業旅行に行きましたとさ。
                                  (了)
作品名:無人島ナウ! 作家名:松橋健一