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無人島ナウ!

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「違います」
「おう、そうか、そうか。なるほど、そうだろう。A型ではないな」
占い師はまた神妙な顔をして、
「ズバリO型じゃな」
「違います」
「おう、そうか、そうか。そうだろうな。ズバリAB型じゃな」
「違います」
「おっと、私としたことが、水晶が傾いているではないか。これじゃあ、当たるはずがない。はっきり言おう。あなたはB型ですね」
「もうB型しかないし、球状の水晶が傾くことなんてあるんですか?」
「何を!これだから素人は困る。わしの水晶にケチをつけるのか。お!何だ!これはお兄さん。これから先、まさか旅行に行くことはないだろうな?」
「クルーズでハワイまで」
「絶対行ってはいかんぞ」
「何でですか?」
「後ろの二人もじゃ。水晶に映っておる。あんたら三人の未来が。ここは日本からはるか遠い太平洋のど真ん中。三人は太平洋のど真ん中の無人島に漂流してしまう。その姿が水晶に映っておる。ああ、恐ろしい。絶対旅行に行っちゃ行かんぞ」
 三人は占い師と別れ、出航するゲートまで歩いて行った。
「旅行に行くなって。無人島に漂流するって」
 康平が言うと、
「そんな占い当たるわけないよ。血液型だって全然当たってなかったじゃないか」
 健二は言った。裕也も、
「俺達のクルーズが沈むって?そんな馬鹿な。あんな胡散臭い占い師の言うことなんて聞く必要ないよ。康平」
「そうだな」
 そう言って三人はクルーズに乗り出航した。クルーズは出航し、皆で海を見た。
「大学も卒業し、三人とも内定も決まっている。俺達の人生これからだ。ヒャッホー」
 康平が言うと健二は、
「ところで康平は卒論は何を書いた?」
 健二が訊くと、康平は、
「卒論はあまり、持論とかタブーだけど、俺は最後にあえて持論を書いたね」
 健二も「俺も持論とか書いた」裕也も、
「俺も」
 スマホ好きの康平は、
「ちなみに俺は卒論でこう言った。人間は情報に溺れてしまってはいけない。もっとベーシックを知り、根本を持つこと。アナログの精神。そんなことを書いたな」
 健二は、
「俺はビジネスも利益のために自分を見失ってはいけない。他人のために与える心。無償の心。人は利他的でなくてはいけない。そう書いた」
 裕也は、
「俺は人はチームの輪を大切にしなくてはいけない。日本人の自分を犠牲にする魂こそ、武士道の心。自分を投げ出す勇気。そんなことを書いた」
 康平は、
「みんないっちょ前のことを書いたな。でも晴れて四月から社会人。クルーズの旅を満喫しようぜ。そろそろ夕飯だ」
 三人はクルーズのディナーの席に着いた。康平は、
「俺も親は山形で大工をしていて貧乏だけど、クルーズでこんなディナーを食べるようになったか。IT企業に内定も決まったし」
「康平のお父さん大工?」健二は言った。
「そうだよ。本当頭の古い親父でね。時代についていけないんだよ。その反動かな。俺がスマホやらパソコンに夢中になるの」
 そんなたわいもない話をしていた。
「そして夜になり、みんな一旦寝ることにした。
「じゃあ、おやすみ」
 そう言って、康平と健二と、裕也は床に就いた。皆、何時間、寝たのだろう。どれだけの時間がたったのだろうか。その時、突然大きな音が響き、船が傾いた。
「ブーブー、緊急事態です」船内放送が鳴り、三人とも眼を覚ます。三人は海の方を見るため、外へ出た。船の前方が折れて船が浸水している。
「緊急事態です。本船は浅瀬の岩に衝突し、浸水が始まりました。間もなく船は沈むでしょう。皆さま慌てず速やかにボートに乗ってください」
 裕也は、
「康平、健二、船が沈むって」
 健二は、
「まさかこんなことになるとは」
 康平は「とにかくボートに乗らなきゃ。ボートの数少なくね?時間がない。今すぐ部屋に戻って命の次に大事なものだけをもってボートに乗ろう」
 三人は急いで部屋に戻り、それぞれ命の次に大事と思われるものを取りに行った。まず康平、
「俺の携帯、スマートフォン!!」
裕也、
「俺のレアものハニーライブのフィギュア!!」
健二、
「俺のTポイントカード!!」
 三人は三人だけが乗れる小さなボートに飛び乗った。健二は、
「まさか、まさかこんなことになるなんて」
 裕也も、
「寒いよう。暗いよう。俺達どこに行っちゃうんだよう。みんなともはぐれている」
 康平は、
「どんどん流されていく。救助隊が来るのを待つしかない。極力体力を失わないよう、これからなるべくしゃべらないようにしよう」
 
そのころ山形で―
「ニュース速報だと。クルーズが沈没。これはまさに康平さがのっでた船」
康平の父、大助がテレビを見ながら言う。近所の人達が駆け付ける。
「大助。このニュースの沈没船。まさか康平君乗ってねえべか?」
「そうなんだ。まちげえねえ。ああ、どうすんべ」
「どうすんべでねえよ。大助の可愛い一人息子だべや」
「そっだらごといったって、どうしようもねえべや」
作品名:無人島ナウ! 作家名:松橋健一