CLOSE GAME
“怖いのは同じ”……そう言ったのはボク。怖い中、ボクはモンスター相手に矢を放ち、短剣を振り回した。そんなボクに、逃げもせずに、倒れたりしないよう回復呪文を唱え続けてくれていたのは、ユウタだ。
「ごめん、ね」
両手を強く組んで泣いているユウタ。その手に、ボクは自分の手を重ねた。
「ごめん、ユウタ」
体力のない自分の身体にイライラして揚句にそれを友達にぶつけるなんて、やっちゃいけない事だ。
止まらない咳に、ユウタが背中をさすってくれる。
「……ごめん……り、がと……」
咳の合間に声を出す。
「水。あった方が楽だよね」
涙を拭って、ユウタが立ち上がった。
「どこかに、川とか湖とかないかな……」
そう言いながら、胸のクリスタルを握り締めていると、
「あ!」
フワリとクリスタルが浮いた。
「あっち?」
ユウタの問い掛けに、クリスタルが最後の力で光った……ように見えた。
「確かめてくる! タカヒサ、待っててね!」
クリスタルの示した方へとユウタが走っていく。ボクはというと、少しでも呼吸が楽になるようにうつ伏せにうずくまるのが精一杯だった。
――――――――――――
どのくらい時間が経っただろう。もしかしたら、ちょっとしか経っていないのかもしれないけれど、辺りの静かさに怖くなって僕は顔を上げた。森の中の草や葉っぱのこすれあう音はおろか、さっきまで吹いていた風の音すら聞こえない。まるで、?嵐の前の静けさ?みたいだ。
「ちょっと、待って……」
それって、ヤバくない?
なんだか胸騒ぎがして、ユウタの消えた方角へと顔を上げる。
同時に、
『ぅわ――――――っ!!』
ユウタの悲鳴が聞こえた。
「ユウタッ!!」
だるかった筈の身体が動く。この際、息が出来てるか出来てないかなんて気にしていられない。ユウタはボクの為に水を探しに行ったんだ。武器を装備していないのに。
「ボクが……助けに……行かなきゃ!」
自分に言い聞かせるように呟きながら、ボクは、走った。
行く手を阻むように伸びている草や枝を左右に掻き分けながら、ボクは走った。息が苦しい。本当は全然走れてなんかないのかもしれない。それでも、ユウタを助けたくて足が前に出る。
「……もう、ヤダ。……こんな、身体、いらない……」
肝心な時に思うように動かない、病弱な身体。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒