CLOSE GAME
規則的に響く電子音。初めて見る器械に表示される、数値とグラフ。点滴とコードに覆われている小さな身体。
何か言いたくて……。何も言えなくて……。頭の中をユウタの思い出が駆け巡り、
「祐太!!」
四人同時に声が出た。
付き添いで付いていた祐太の両親が驚いてボク達を見る。
“ピッ!”
電子音が大きく反応した。同時に祐太の胸が大きく息を吸い込む。
「ゆうちゃん!」
お母さんが祐太の頬を両手でふわりと挟み、お父さんがナースコールを押すのが見えた。
そして、ベッドの上の祐太の指が、ボクらにそっとピースサインを告げた。
「なんだ。オレだけ西病棟かよ」
つまらなさそうに亮介が口を尖らせる。
祐太が意識を取り戻した直後、担当医……つまり、宗一郎のお兄さん……が駆けつけ、ボクらは追い出された。と言っても、厳しく追い出された訳ではなくて、ひとり一人の頭を撫でてくれた。祐太が一般病棟に移ったらまた会いにおいで、と。
「ボクらは自由に動けるから、会いに行くよ」
“ね!”と智と頷き合う。
「あ!」
宗一郎が何か思い出して頬を掻いた。
「俺、明日、退院だわ」
「え?」
「そうなの?」
「マジかよ」
宗一郎の入院理由は“盲腸”。ガスも出たから、もう、ここにいる必要は無い。
「学校終わったら来るよ、どうせヒマだし」
一言多いのは、コミュニケーションが下手だから。
「そうだ。貴久」
まず到着したのは、同じ西病棟の亮介の部屋。その部屋の前で扉を開けた亮介が振り返る。
「お前、どこ中?」
あと半年。春からボクらは中学生になる。
「緑林中になる、と思うけど」
「……範囲内だな……」
「何?」
「オレ、そこ行くわ」
公立の中学校は、同じ区域の中でなら好きな学校に進学できる。ボクのいる地域では選択対象校が八校あるのだ。
「予定してた学校には入れないんだし。オレにもプライドってもんがあるし!」
握りこぶしで頷く亮介。
「どうせなら、サッカーが全然ダメなとこ行って、オレの力で全国大会まで引っ張って、奴らを見返してやる!」
鼻息荒く言ったところで、
「その為に、足、早く治さなきゃだけどな」
と舌を出す。
「緑林中学校?」
“公立だよね?”と智がボクを見た。
「僕もそこがいいな」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒