CLOSE GAME
手招きされて走った先には、エレベーター。しかも……。
「これ、緊急用……だよ?」
緊急患者とその関係者しか使っちゃいけないエレベーターだ。
「俺らも急を要するから、いいんだよ!」
そう言い切ってサッサと飛び込む。ボクらもそれに続いた。
「何かあったら、宗一郎の所為って事で」
笑う亮介の頭に、
「殴るぞ!」
宗一郎の拳固が当たる。
「殴ってから言うなよ!」
頭を押さえる亮介。笑いをこらえるボクと智。そして、エレベーターが到着音を告げた。宗一郎を先頭に亮介、ボク、智と続く。
エレベーターを降りてすぐの角を左へ曲がると、ロック付きのガラス扉がボクらの行く手を遮っていた。
「どうやって入るんだよ?」
亮介が、扉に手をかけて引っ張りながら宗一郎を振り返る。
「誰かが通り抜けた時に、横をすり抜ける」
あれ? 割とアバウト。
「内側からはロックが掛かってないんだけど、こっちから入る時はカードが必要なんだ」
「それを持ってるのは?」
「担当医と担当看護士と家族」
なんだか、ムリっぽい。
「来た!」
宗一郎が扉前にいた亮介の襟首を掴んで引き戻す。
足音と共に白衣が見えた。ボクらは壁のへこみにひしめき合いながら身を隠した。話し声が段々近づいてくる。いつでも飛び出せるように体勢は整え済みだ。金属音を伴った電気音が聞こえた。
「行くぞ!」
宗一郎が飛び出し、ボクらが続く。出てきた医師が驚いて振り返った。
「宗一郎!!」
すれ違いざまに見えた名札には『常磐賢太郎』。きっとお兄さんだ。
振り返らずに走り抜ける宗一郎にボク達も走る。
「どこへ行く気だ!」
止めようとするお兄さんに、宗一郎が振り返った。
「ユウタを助けに!」
お兄さんに付いていた看護士が顔を曇らせる。
「知り合いなのか?」
不思議そうなその質問に、
「友達!」
宗一郎が迷うことなく答えた。それを聞いたお兄さんがフッと笑い、
「オペは成功したんだが、意識が戻らない」
黙ったまま、部屋を指さす。
突き当たりを右。ボクらに“行け”って言ってくれてるんだ。
「分かった!」
宗一郎が頷き、ボクらはペコリと頭を下げた。
廊下を突き当たって、右。部屋はひとつ。プレートの名前は、『各務祐太』。間違いない!ボクらは顔を見合わせて頷いた。
先頭にいる宗一郎が扉を開ける。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒