小説が読める！投稿できる！小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ！

　お付きの黒服ふたりが慌てるけど、
「ちゃんと戻るよ。友達を助け終わったら」
　訳の分からない返事をされて、渋々廊下を戻り始めた。
　“助け終わったら”
　確かに智はそう言った。
「ユウタは、どこ？」
　智がボクと宗一郎を見る。
　そう。ユウタを助けなきゃ、ボクらのゲームは終わらない。
「だから、“ユウタ”なんて名前の患者は……」
　宗一郎が首を振る。
「急に入院とかって無いのか？」
　亮介が思いついたように言った。
「急患、って事？」
　智が問い返す。
「救急外来か！」
　亮介を見て、智を見て、宗一郎が頷いた。
「でも、そうなると……」
　まだ階下の処置室にいるのなら、ボクらでは入れない。手術中なら、尚更だ。
「……待って……」
　ボクは院内探索をしている時の事を思い出していた。智も亮介もあの時、チラッと見ている。だとすると、ユウタにも会ってるかもしれない。
　確か、南病棟にいたつもりなのに、気がついたら西病棟にいて……。
「集中治療室！！」
　確か、走り去るベッドに縋りついていた両親が「ゆうちゃん！」と呼びかけていた。
「なるほどね。知らないはずだ」
　宗一郎がメガネを上げる横で、
「どこだよ、それ？」
　亮介が身を乗り出してくる。
「西病棟の四階」
「入れるの？」
「まだ医師やら看護士やらの出入りがあるから、何とかなると……」
　集中治療室への廊下はロック付きの扉で閉ざされていて、関係者以外は入れない。
「うだうだ言っててもしょーがねーじゃん！」
　亮介がボクらの肩を叩く。
「だな」
「うん」
「だね」
　履きかけのスリッパに足を入れ、先に歩き出した三人の後ろを追いかけた。
「貴久」
　振り向いた宗一郎がボクに声をかける。
「何？」
　どうしたんだろうと首を傾げるボクの額に、宗一郎の指が当たった。
「枕は置いていけ！」
　あ！　ボクってば……。
　枕をベッドへ投げたボクの後ろで、三人のクスクスと笑う声が聞こえる。
「行くぞ！」
　膨れて振り向いたボクの頭を小突いて宗一郎が西病棟の方を指さし、ボクらは西病棟四階目指して走り出した。

　　
　西病棟への渡り廊下を走る。亮介ってば、松葉杖のクセにボクより早い。
「お前が遅いんだよ！」
　どうせ、運痴だもん。
「階段……は面倒だな」
　宗一郎が亮介を見て判断する。
「こっちだ！」