CLOSE GAME
「過去を彷徨って、ゲームを彷徨うはずなのに、どうして君達は戻って来るんだろう?」
四つのクリスタルを手の中で転がしながら、面白そうに首を傾げる。
「でも、丁度いいや」
ニッと笑ってボクらを指差してくる。最初はリョウスケ。
「治らない足で歩きたい?」
次にサトル。
「後悔を抱えて生きていきたい?」
最後にソウイチロウ。
「“おまけ”のまま過ごしたい?」
三人の顔が哀しみに歪む。
「ここにいれば、全てが自由だよ。病気もケガも縛り付ける親もいない。ステキでしょ?」
“ね?”と微笑みを浮かべてみせる。
「ふざけんなよ、ユウタもどき!」
リョウスケが涙を拭う。
「こんなケガ、すぐに治るんだからな!」
「君がそれを言うの?」
唇を噛むリョウスケを見て、クスクスと笑うユウタ。
「君も手伝うって言ったろう?」
サトルがリョウスケの前に出る。
「偽善だね。自己満足?」
違うとばかりに首を振るサトル。
「タカヒサ」
黙って様子を見ていたソウイチロウが、小さな声でボクを呼んだ。
「一度しか言わない」
その言葉に頷く。
「俺んちは、兄貴も姉さんも頭がいい。ふたりに比べて俺は出来の悪いお荷物なんだ。でも、親には体面ってもんがある。兄貴のコネで進学を決められた。俺の意思は関係ない。上ふたりの“おまけ”みたいな俺に、自分の意思は通せなかった」
作戦かと思いきや、突然のカミングアウトに黙って聞き入るボク。
「院内学級を覗いた時、真っ先にお前が目に入った。馬鹿馬鹿しくてやめたんじゃない。お前の明るさが眩しかっただけだ。素直で元気なお前がうらやましかった……」
うらやましかった発言にびっくりしてソウイチロウを見上げた。ソウイチロウがニッと笑う。
「戻ったら、俺は“おまけ”をやめる。ちゃんと親父と向き合う。こんなバカだけど、友達でいてくれるか?」
「勿論!」
ボクは大きく頷いた。
「ねぇ、おまけのソウイチロウ」
笑いながらユウタの声。今度はソウイチロウの番だ。
「ここにいれば、誰とも比べられずに済むよ?」
「残念だったな。俺は“戻る”って決めたんだ!」
ソウイチロウが笑い返す。
「おまけなのに? 頭の良い事を鼻にかけ過ぎて、学校じゃひとりぼっちなのに?」
「それも残念だったな! 友達くらいいるさ、ちゃんと、ここに!」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒