CLOSE GAME
五人
闇の中だった。ここには見覚えがある。そう、ここは“果て”。ボクはまた戻ってきた。
「……なんで?」
光の中に消えていった筈のユウタが、そこにいた。
「なんで? ちゃんと四つあるのに……?」
ユウタの手の中、四人分のアイテムがクリスタルへと姿を変えていく。
風の緑。炎の赤。水の青。火の……。ソウイチロウのクリスタルが、リョウスケのそれと融合し、ひとつの勾玉へと姿を戻す。
「四つ、じゃない?」
そうか。元々ひとつの物だったんだ! じゃ、もうひとつは?
その疑問に答えるかのようにボクの手の中で何かが光った。
『……タカヒサ……』
そっと手を広げてみる。これは、ユウタのクリスタル。闇に飲まれる瞬間、ユウタの手の代わりに握り締めた小さな光。
『……天の光、地の光……』
手の中のクリスタルから声が聞こえる。優しいこの声は……。
「!」
闇の中のユウタが、ボクの手の光に気づいた。
「タカヒサ。まだいたんだ?」
そう微笑みながら手を差し出す。
「ぼくのだよ。それ」
その冷たい声と重なって、
『……数多の自然の……』
優しい声が小さく響く。
「これは、お前なんかのじゃない!」
声が聞こえるんだ。渡すもんか!
「そうだね。“ぼくの”じゃなくて、“ぼく”だ」
「え?」
びっくりして固まったボクの手から、光がもぎ取られた。
「だって、これは“ユウタ”の……」
『……恵みの力を……』
「“ユウタ”はぼくだもの」
得意気に放り上げたクリスタルから、
『……与え給え……』
最後の声が響き、それは眩しい光を放った。ボクもあいつも思わず両手で視界を遮る。ほんの一瞬だった輝きが消え、それは静かに落下し、あいつの手の中に戻った。
そして、
「なんだ?」
「どこ、ここ?」
「“果て”?」
「リョウスケ! サトル! ソウイチロウ!」
三人が戻った。
それぞれが頬に涙の跡。ボクと同じで、過去を見てきたんだ。
「タカヒサ!」
リョウスケがボクに飛びつき、気付く。
「……足……が……」
サトルが無言で頷いた。右手が動かないんだ。
「やっぱり、あいつか!」
ソウイチロウが闇に浮かぶユウタを睨みつける。
「違う! ソウイチロウ、あいつはユウタじゃない!」
「ユウタだよ、ぼく」
ボクらを見下ろして、ユウタがクスクス笑った。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒