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 どうやらここはゲームの中らしい。自分の望むものが手に入るという、全くのご都合主義な変な世界。抜け出すためには、その“世界の統治者”のいる“果て”へと行かなければならない。
「……じゃ、あのゲームが?」
 てっきりママからのプレゼントだと思ってた、あのゲーム機。
「ゲーム?」
「うん。これくらいの……」
 と指で大きさを示しながら説明する。
「ソフトはセットされていたから、ちゃんとしたタイトルは憶えてないけど……」
「オープニングとかにストーリー説明とか出てこなかった?」
「あー……。それ……」
 ユウタの真剣な表情に頭を掻くボク。
「面倒だから、とばした」
 あはは!
 ごめん、ユウタ。
「でも、ユウタは?」
「ぼく?」
 今度はユウタが戸惑う。
「ぼく……は……。さっきした説明のがオープニングだったのかなって思うんだけど」
「それは?」
 ユウタの白い衣装に映える、クリスタルのペンダント。
「これが“胸の輝き”みたい。行くべき方向を指してくれる」
「ふーん……」
「君は……“シーフ”?」
 ユウタがボクを指差して首を傾げた。
 緑が基調の衣装。背中に弓矢。腰に短剣。
「かな?」
 二人で顔を見合わせて苦笑い。
「ぼく、実はさっきまで自分が何だか本当に分からなかったんだ」
 そう言って両手を広げてみせる。
 ゆったりした白い衣装に武器や防具らしき物はついていない。
 ペンダントの指す方向に歩いていてモンスターと戦っているボクを見つけたユウタは、ボクの置かれている状況が分からずに呆然と見ていたらしい。やがて戦闘が終わって倒れ込んだボクを見て駆け寄って……。
「“なんとかしなくちゃ”って思ったら、言葉が勝手に……」
 ―――  『天の光、地の光、数多の自然の光よ、
         我にまばゆき恵みの力を与え給え!』 ――― 
 言葉と同時にペンダントが光り、その光りでボクが目を覚ました。
「ずっと、モンスターと戦ってたの?」
「う……うん。だけど……」
 だけど、それはゲーム上の話で……。
「君も、何か“望むもの”があるの?」
「“望むもの”……?」
 それって、具体的に“新しいゲーム機”とかじゃ……ないよね、やっぱ。
「じゃ、ぼくと同じだね」
「え?」
「“お母さんお父さんのいる世界に帰りたい”……でしょ?」
「……う、ん……」
 そうなのかな。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒