CLOSE GAME
仲間
「……天の……」
耳元で囁くような声が聞こえる。
「……地の……」
遠く……近く……静かに響くその声に、
「……数多の……」
ボクは天国に来たのだと、そっと目を開けた。
「良かった! 気がついた?」
開いた目に映ったのは、白いローブをまとった天使。その天使がボクにしがみ付く。
「目を開けなかったら、どうしようかと思った!」
しがみついてくるその感触に、ジワジワと湧き上がる疑問。
「……キミ、誰?」
くっついている身体を引き離して、辺りを見回して……。疑問、その二。
「ここ、どこ?」
病室にいた筈なのに、見たことも無い一面の緑。万華鏡のように射す木洩れ日がボクと天使を照らしている。
「ぼく、ユウタ、です」
天使がペコリと頭をさげた。
「天使?」
指差すボクに、天使がプルプルと頭を振る。
「“ヒーラー”……みたい」
首を傾げるボクにユウタと名乗った天使が説明し始めた。
「気がついたら、ここにいた……」
―――― 気がついたら“ここ”にいた。ここは、森の中。夢だと思って、何度も起きようとしたけれど、何も変わらない。
途方にくれていたら、何処からか声が聞こえてきた。
『ようこそ。ここは【CLOSE GAME】。あなたの望んだあなたの世界……』
「ぼく、何も望んだりしてない!」
『いいえ。望んでいるはず……』
「何を?」
『新しい世界……』
「“新しい”って」
『あなたの望むものが手に入る……世界……』
「“望むもの”? だったら、戻してよ! お母さんやお父さんのところに!」
『…………』
「戻してよ!」
『……“冒険”を選択……』
「そんなの望んでない!」
『元の存在に戻る事を希望するのであれば、“世界の統治者”の元へ向かわねばなりません』
「“統治”? ……何?」
『世界の果てへの道のりは、あなたの胸へと託しましょう』
「何? ちゃんと説明してよ!」
『胸の光があなたを正しい道へと導くでしょう……』
「ち、ちょっと! いい加減なこと言わないでよ!」
『幸運はその胸の中に!』
―――― 「……というわけ」
深々と溜息をつくユウタ。
「何、それ?」
ボクにはさっぱりだ。
「とりあえず、自分に起こった出来事を考えたんだけど……」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒