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 ユウタが両手でクリスタルを包むと、ボクらの周りを照らす程度の光がその手の中に灯された。
「……こっち、みたい」
 ユウタを先頭にボクらは洞窟を進み始めた。
 洞窟の中はまるで迷路だった。ひとつのホールから道が幾つも分かれている。これといって罠があるわけでもなく、時々、手間のかからないモンスターが行く手を遮る程度だ。
 どれくらい歩いただろう。何度も分かれ道を通って、何度も雑魚モンスターを倒して……。いい加減、歩く事にも疲れ始めた頃、サトルが声を上げた。
「……ソウイチロウは?」
 洞窟の中、ユウタを先頭にボク、リョウスケ、サトル、ソウイチロウの順で歩いていた。その最後尾にいたはずのソウイチロウの姿が消えていた。
「さっきまでいたのに……」
 サトルが首を傾げる。
「何か見つけたんじゃねーか?」
 歩いている途中、ボクらが見過ごしてしまった何かを見つけたのかもしれない。とリョウスケが言う。
「戻ってみる?」
 ボクが今来た道を指さすと、サトルがユウタの手を掴んだ。
「さっきまでいたんだ。だから、すぐそこにいると思うから僕とユウタだけでいいよ」
 少し戻るだけだから、道標のユウタがいれば三人で戻って来れる。だから、ボクとリョウスケはここでしばらく待っていて欲しい。そう言って、サトルはユウタの手を引いた。
「タカヒサ!」
 サトルに手を引かれながら、ユウタが腰の皮袋をボクに差し出す。
「何かあったらイヤだから、これ、持ってて!」
 皮袋いっぱいに入っているのは“回復の水”。
「ボク、魔法が使えるから。だから」
 ソウイチロウに何かあったとしても、ユウタの魔法で回復出来る。でも、ここに残るボクとリョウスケはその術を持たない。だから、持っていてと言うのだ。
「うん。わかった」
 ボクが皮袋を受け取り、サトルとユウタは今来た道を戻っていった。
 真っ暗になった洞窟の中、幾つ目かのホールの真ん中に立つボクとリョウスケ。ふたりを見送った後、“あ〜あ”とリョウスケの溜息が聞こえた。
「ったく、何やってんだか、ウチの作戦参謀は」
 呆れたようにリョウスケがユウタ達が姿を消した通路を見る。
「でも、ラスボスを倒すための手掛かりを見つけて来るかもよ」
 理由も無くいなくなる奴じゃない。そう思ってリョウスケに言葉を返す。
「てかさ、暗過ぎね?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒