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「僕らが渡りきるまでは落ちてこないよ」
 サトルが微笑み、
「ついでに水飲んで回復しておくのもいいかもな」
 ソウイチロウが壁の水を両手で汲み取って飲んだ。ボクらもそれに倣う。体力も魔力も満タンだ。何より、“仲間”がいる事が一番嬉しかった。
 やがて、洞窟の入口に辿り着いた。サトルが洞窟への階段を踏み、ソウイチロウ、リョウスケが続く。そして、ボクが階段を踏んだ時、後ろから水の崩れる音が聞こえた。振り返ると、物凄い勢いで水が落ちてくる。ユウタがまだ泉の底にいるのに。
「早いよ!」
 ボクはびっくりして後ろにいたユウタの腕を引っ張った。ユウタの身体がボクの身体ごと洞窟の中に飛び込む。
「何なんだ?」
 ボクらを受け止めてくれたリョウスケがサトルを見上げた。
「『聖なる四つの光を受け入れた時、水の扉は閉じる』って……」
 サトルも驚いている。
「水と……」
 リョウスケがサトルを指さした。
「炎は、オレとソウイチロウだろ。で、風と光。四つじゃん!」
 ソウイチロウが黙ったままボクらを……もとい、ユウタを見下ろす。ユウタはボクとリョウスケの上で震えたままだ。ボクは思わずソウイチロウを睨み上げた。ユウタにはいっぱい助けてもらった。それはボクに限らずの事だ。ボクの視線に気付いて、ソウイチロウが目を逸らした。
「よっぽど気が短ぇんだな、水の奴らは」
 リョウスケが笑いながらユウタの頭を撫でる。やっぱり、リョウスケは優しい。差し出されたサトルの手を取って、ユウタが立ち上がり、ボクとリョウスケも立ち上がった。
 洞窟の入口は水の扉が塞いでいた。水面の光を反射して屈折した光が扉を通して洞窟の中を微かに照らしている。
「どっち?」
 誰とはともなく出た問いに、
「とりあえず、奥?」
 誰とはともなく答えが返る。
「ソウイチロウ!」
 頼みの綱はソウイチロウの夜目。目の前のソウイチロウのローブを引っ張ると、
「見えるんだけど、洞窟が幾つにも分かれてて、どこを選べばいいのか……」
 ソウイチロウの溜息混じりの答えが返ってきた。直後、
「きゃん!」
 ボクの目の前をユウタが誰かに引っ張られて横切る。
「そっか、ユウタのクリスタル!」
 リョウスケがポンと手を叩いた。
「……て事だ。頼むぞ、ユウタ」
 ソウイチロウがユウタから手を放して言った。
「う、うん」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒