CLOSE GAME
断末魔のような咆哮が森に響く。ボクらの周りに、大きな地響きと共に氷柱が突き刺さった。最後の力でボクらを狙ったのだろうが、ソウイチロウの作った炎の壁はそれすらも溶かしていく。溶け損ねた氷柱がボクらの周りに落ちていくだけだ。
そして、ドラゴンの身体の水とリョウスケの炎が互いを相殺し合い、辺りが霧に包まれた。
「風よ……」
せめて、目の前のドラゴンだけでも確認出来るよう、風で霧を追い払った。吹き抜ける風で霧が左右に分かれていく。
「何、あれ?」
霧の中、青い何かが、水に包まれて宙に浮かんでいた。
「本体だ!」
ソウイチロウが叫ぶ。
「みんな、無事!?」
霧の中、ユウタのクリスタルに導かれて、離れていたふたりが駆け寄ってきた。
「凄いね……」
ソウイチロウの壁にユウタが驚いている。
「あれが、本体?」
サトルの問いにソウイチロウが頷いた。
「あれを叩けば、きっと……」
ソウイチロウはそう言うけれど、満身の力を込めて放った一発に、ボクもリョウスケも肩で息をしている状態だ。あんな高い位置にある本体を攻撃する体力がない。そんなボクらをサトルが見回す。膝をつき肩で息をしているボクとリョウスケ。ユウタの残り少ない魔力では回復しきれない。念の為に壁を維持しているソウイチロウとサトルの目が合う。
「わかった」
サトルがボクらの肩をポンと叩いた……かと思った瞬間、その場を飛び出し、地面に刺さっている氷柱を足掛かりに浮いている水の塊へと飛び上がった。
左手に持ったロングソードが太陽に輝きながら掲げられ、
「ハッ!」
掛け声と共に振り下ろされる。
水の塊がグニャリと変形し、四方に飛び散る。サトルの身体が、ストンと氷柱の上に降り立った。左手を器用に返し、剣を腰の鞘に納める。その時を待っていたかのように、宙に四散した水しぶきが丸い粒のままサトルを取り囲んだ。
「え?」
前後左右上下、全てを水玉に囲まれて驚くサトル。その顔の横で、塊の中心にあった青い物が光る。きっとこれが?本体?なんだ。自分を攻撃してきたサトルへの反撃なんだろう。サトルを囲む水玉が次々とくっつき、青い何かごとサトルの身体をその水の中に取り込んだ。
「サトル!」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒