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 ソウイチロウの金冠が赤く輝き、魔法を使っているのだと分かったから。
「……内に秘めたる命の火よ……」
 言葉が紡がれる度に輝きが目の前に広がっていく。
「……熱き鼓動を力に変え……」
 言葉が終わる頃、金冠の輝きは大きな壁となってふたりを守っていた。
  ――――――――――――
 精霊の声が聞こえたなんて。
「“おまけ”じゃないじゃん」
 思わず出たボクの言葉に、ソウイチロウが舌打ちした。その頬がピンクに見えたのは、光の壁の所為なのかな?
「ま、お前がこっちに来たのなら丁度いい。一発でかいのをかませないか?」
 あんなに重い大剣を運んだのに息が乱れていない。ソウイチロウの腕の傷も治っている。ちゃんとユウタの回復呪文が届いているんだ。
「出来るけど、大丈夫かな?」
 ただ水を散らすだけじゃ退治出来ないのは分かっている筈だ。
「大丈夫! 精霊がそう言ってる」
「精霊が?」
 ボクはリョウスケと顔を見合わせて首を傾げた。
「今度はお前の番だ……」
 ソウイチロウに言われ、リョウスケの身体がピクンと動いた。
『今度はリョウスケの番……』
「え?」
 ボクには聞こえない精霊の声にリョウスケが反応しているのだと分かった。初めて魔法を使う時には、誰かが導いてくれる。リョウスケは、いつも上段に構えていた大剣を下段に構えた。
『……藍の炎、緋の炎……』
「藍の炎、緋の炎……」
 聞こえてくる言葉を復唱しているのであろうリョウスケの動きに、ボクも合わせる。
「翠の風、蒼の風……」
 ボクの篭手に風が集まるのと同じように、リョウスケの剣に赤い炎が集まり始める。
「燃えさかる……」
「遥かなる……」
 リョウスケの剣が炎に包まれ、ボクの身体を風が覆う。
「我に従いて……」
「我に集いて……」
 リョウスケが切っ先を返し、ボクは組んでいた指を解いた。
「「その力を解き放て!」」
 リョウスケの大剣が下から上に空を切り、更に上から振り下ろされる。同時に、風が炎を巻き込んで燃えさかる竜巻へと姿を変えた。剣が振り下ろされる事で、纏っていた炎の竜巻が唸りを上げてドラゴンへと襲い掛かった。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒