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 ドラゴンの咆哮が響き渡り、その身体が大きく震え、大きな氷柱が全身から放出される。向かう先はソウイチロウとリョウスケだ。ユウタがクリスタルを両手で包み込んで呪文を唱え始めた。回復の魔法をここからふたりに送っているんだ。サトルがユウタの前に立って、ボクに頷く。
“ユウタは僕が守るから、ふたりの所へ行って”と……。
 ボクは頷き返してふたりのいる方へと走った。身軽な“シーフ”というジョブ柄、氷柱を避けながら走るのには苦労は無かった。ようやく辿り着こうとした矢先、
「ソウイチロウ!」
 リョウスケの声が聞こえた。嫌な予感が胸をよぎる。ボクは最後の氷柱を飛び越えた。
 氷柱の向こう側、飛んでくる氷柱の真正面にソウイチロウがいた。大剣を弾かれたリョウスケを両手を広げて庇うように仁王立ちしている。その額の金冠が赤く輝きを放っていた。燃えるような赤い光がふたりの前に壁を作り、飛んでくる氷柱を弾くより先に消滅させている。
「何、あれ?」
 コツンとボクの足に何かが当たった。足元を見る。リョウスケの大剣だと気付いた。慌てて手に取る。
「お、重っ!!」
 恐ろしく重い剣をズルズルと引きずりながら、ヨタヨタとふたりのところへと辿り着いた。
「サンキュ!」
 とてつもなく重い剣を軽々と持ち上げて笑うリョウスケ。やっぱりこれはリョウスケの剣なんだと納得する。
「ソウイチロウ、どうしたの?」
「知るかよ!」
 何かが聞こえたと思ったらこうなっていたとリョウスケが言う。
「聞こえたんだよ、精霊の声!」
 前を向いたまま、ソウイチロウが声を上げた。
  ――――――――――――
 大きな氷柱を避けてふたりで倒れこんだこの場所で、リョウスケの応戦虚しく、その大剣も弾き飛ばされてしまった。武器も防具もない状態に戸惑うふたりに、ドラゴンの攻撃は止めを刺すべくものへと姿を変える。大きな氷柱と細い氷柱。大きな氷柱で閉じ込め、細い氷柱で貫こうというのだ。
 なす術のないふたりが、もうダメだ! と身を屈めた瞬間、優しい声が頭の中に響いてきた。
『……地の火……』
 何事かと顔を上げるリョウスケの前に、スクとソウイチロウが立塞がった。
「ソウイチロウ」
 この声は何かと聞こうとしたリョウスケは、その手を戻す。
『……星の火……』
「……地の火、星の火……」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒