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 温かい光が、ユウタの手を通してボクの中に注がれる。失った体温が一気に戻って来た……そんな感じだ。身体中に力を感じ、立ち上がるボク。ユウタの呪文を初めて目の当たりにしたリョウスケが目を丸くしている。
「凄ぇな、それ」
 ユウタが恥ずかしそうに笑った。
「魔法は体力も消耗する、って事か……」
 立ち直ったボクを見て、ソウイチロウが頷いた。
「よく気が付いたな」
 ソウイチロウがメガネを上げながらユウタを見る。“気付いたわけじゃない”と首を振って、
「ひとりが怖かったから追いかけただけだもん」
 ユウタが小声で答えた。
「もう一回、やる?」
 リョウスケの横に立って訊くと、ソウイチロウの顔が渋く歪んだ。
「そうそう同じ手にかかってくれるかどうか……。チャンスは一回だ。これをしくじったら一旦退却。作戦を練り直そう」
 ボクらは頷き合い、フォーメーションを整える。ソウイチロウが盾を構え、その真後ろにボクとリョウスケ。少し横にロングソードを構えたサトル。ボクらの後ろにユウタ。
「行くぞ!」
「うん!」
 攻撃を仕掛けてくるドラゴンに向かって、早口で呪文を唱える。大丈夫。今度は、ちゃんと風を感じる。
「翠の風、蒼の風……」
 集まる風に精神を統一。風の流れを全身で捉える。が、不信な流れに目を開けた。
「危ない!!」
 ソウイチロウがボクを突き飛ばし、自らもその場から転がり逃れる。同時にボクらのいた場所に大きな氷柱が地響きと共に突き刺さった。ボクらの行動を読んで、一足早く攻撃を仕掛けたという事だ。
 ボクらを見比べていたドラゴンの青い目が、ソウイチロウ・リョウスケの方を向いて止まった。
「マジかよ!」
 リョウスケがソウイチロウの前に立ちふさがる。庇われたソウイチロウの腕からは赤い血。ボクらを突き飛ばした時に氷柱の攻撃を受けたみたいだ。その手には、サトルの盾は無かった。氷柱の攻撃を受けた時に弾かれたのだろう。ボクらが近づく間もなく、ドラゴンの目が光った。駆け寄ろうとするボクらの前に氷柱が突き刺さる。視界が氷柱に閉ざされた。リョウスケの大剣が氷柱を弾いている音だけが森に響いていく。
 幾度となく繰り返される音。
 そして、大きく弾かれる音が聞こえ、
「あ!」
 リョウスケの声が氷柱にこだました。
 ボクらは、必死に氷柱を避けながら声のした方へと進んだ。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒