CLOSE GAME
ボクらは逃げながらもユウタとソウイチロウの方を見た。ユウタが両腕をかざしながら落ちてくる氷柱を避けている。その少し後ろにソウイチロウの姿も見える。ふたり共必死だ。
「タカヒサ!」
攻撃組にサトルが合流した。ボクらの少し後ろを走るサトル。背中の盾で走りながらボクらを防御してくれている。
「ドラゴンの気をユウタ達から逸らして!」
サトルの言葉に頷き、ボクは弓を構えた。サトルは防御体勢のまま、リョウスケが際どいところを飛んでくる氷柱を剣で弾き返している。ふたりに守られて、ボクは連続で矢を放った。
水しぶきも氷柱も物ともせず、何本もの矢がドラゴンの目や額に命中!
ドラゴンの目が深い青に変わり、ボクを見て怒りの雄叫びを上げた。
「やべぇ」
引きつるリョウスケの笑顔。
「だよね」
「逃げるよ!」
ボクら三人は更に走った。泉から……ユウタ達から、少しでもドラゴンを引き離すために。
草を分け木々を避けながら走るボクらをドラゴンが追ってくる。足音はなく、枝の折れる音だけが背後から響く。炎のドラゴン同様。こいつの本体も水そのものなんだと思った。
「よし!」
かなり走ったところで、リョウスケが立ち止まり剣を抜いた。振り返り、そのまま構える。
ソウイチロウの作戦だと、ここで炎のドラゴンの時みたくリョウスケとボクの“風の剣”で水を散らしてやっつける! という事になっている。
「やるぞ!」
「うん!」
リョウスケの剣が大きく上段に構えられ、ボクは両手を胸で組む。
「翠の風、蒼の風……」
枝を揺らしながら風がボクに集まってくる。
「遥かなる……」
身体を吹き抜ける風が、リョウスケの大剣へと渦を巻く。
「我に集いて……」
リョウスケの腕に力が入った。
「……解き放て!」
振り下ろされた剣を中心に竜巻が巻き起こり、一気にドラゴンの身体を粉砕した。まるで雨が降っているかのような水しぶきが森を覆う。
「勝った?」
落ちてくる水に向かって目を凝らすボクら。キラキラと輝きながら落ちてくる様は、まるで宝石のようだ。
「まだだ!!」
声がして驚いて振り返ると、いつの間にかボクらに追いついたソウイチロウがサトルの背中から盾を取り外していた。
「ユウタは!!」
「あいつなら、大丈夫だ」
ここからだと木々が邪魔でユウタが見えない。
「来るぞ!」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒