CLOSE GAME
「タカヒサとリョウスケは、この辺で待機。ふたりが誘き出したドラゴンをここで攻撃する。ドラゴンが攻撃に気を逸らした隙に、ユウタはこっちに逃げて来い」
「ソウイチロウは?」
「俺は、ここ」
ユウタに“逃げて来い”と言った場所を示すソウイチロウ。
「戦闘は?」
「俺とユウタは非戦闘員だぞ。避難しているのが当然だろ」
尤もらしく言い切るソウイチロウに、
「きったねー!」
リョウスケが突っかかる。が、
「武器持ってねーもんな。許してやるよ」
とすぐさま笑顔になった。なんだか不思議な信頼関係だ。
ともあれ、ボクらは早速行動に移る事にした。ユウタとサトルが泉に近づくのと同時に、ボクとリョウスケは足音を忍ばせて指示された場所に移動する。少しでもドラゴンに当たりやすくする為に木に登るボク。リョウスケは木の下だ。
スタンバイが終わりボクが合図を送ると同時に、ふたりが泉に近寄る。静かだった水面がゆらゆらと波打ち始めた。このまま引き返せば何事も起こらないんだろうけど、そうはいかない。ユウタは皮袋を泉に入れた。波は更に大きくなる。沈めた皮袋を一気に引き上げた。水が皮袋いっぱいに入っている。水面が盛り上がり始めた。皮袋のふたを閉める。水面の盛り上がりが一気に大きくなり、轟く咆哮と共に、盛り上がった水がドラゴンの形へと変化した。
「逃げろ!」
ソウイチロウの声が飛ぶ。皮袋を抱きしめたユウタの手をとって、サトルがソウイチロウの方へと駆け出した。ドラゴンの青い目が、逃げるふたりを捕らえる。その身体を形成している水がブルブルと震え、再び、ドラゴンが咆えた。
「タカヒサ!」
下からリョウスケの声が聞こえた。ボクは数本の矢を抜くと、素早く構え、ドラゴンの青い目めがけて弓を引いた。
風の力を伴った矢が、ドラゴンの目に刺さる。悲鳴にも似た咆哮を上げ、ドラゴンの頭が向きを変えた。
ボクが木から飛び降りるのと同時に、リョウスケが背中の大剣を抜く。ワザとその刃を太陽に向けてドラゴンの視線をこっちに釘付けにすると、ボクらは走り出した。二手に分かれたボク達にドラゴンは身震いをする。震える身体から飛び散る水しぶきが、細かい氷柱になって四方に散った。
これじゃ、二手に分かれた意味がない!
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒