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 リョウスケがいつの間にかボクらを包んでいる光に頬を染めて頷く。
 “五十年に一度の天才”と言われ、監督・コーチにチヤホヤされ、全国の有名校からスカウトが来る。そんな生活を続けるうちに傲慢になっていた。
「この光が、そう言ってくれてる気がする」
 暖かな茜色の光は、ボクの胸にも穏やかな安らぎを与えてくれている。
「友達も一から作り直しだしな!」
 リョウスケに肩を叩かれ、ボクは笑顔を返した。
 天狗になって人を見下すようになると、周りにいる友達が随分と下衆に見えた。そのせいか、友達をアゴで使うようになる。傲慢な態度は、今まで仲良しだった友達を遠ざけた。気付いたときには、以前のように笑い合える友達はいなくなっていた。
「でも、僕は……」
 動かない右腕を押さえて、サトルが首を振る。
「何かしてくれるって言うんだったら、リハビリ、付き合ってくれよ」
 リョウスケが左手を差し出した。
「僕……」
 サトルは……。いつも的確な判断でボクらを導いてくれたサトルが迷ってる。ボクはボクに出来る事を一生懸命に考えた。リョウスケ……。リハビリ……。付き合う……。
 そうだ!
「ボクのスイミングが先だよ、リョウスケ!」
 “ね!”とサトルを見る。
「ボクのが先約なんだから」
 自信満々のボク。すると、横からソウイチロウがボクの頭を小突いた。
「サトルの骨折を治す方が先だろ?」
 ソウイチロウとリョウスケが笑う。
「いっぱい考えたからじゃん!」
「そういうのは、考え足らずって言うんだよ」
 ソウイチロウの言葉に口を尖らすボク。
「なにしろ、水深20センチで溺れる奴だからな」
 リョウスケが川を親指でさした。クスクスとユウタが笑い出し、キョトンとしたサトルにソウイチロウが説明を始める。
 世界は朝になっていた。


作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒