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泉、ふたたび


  
 ボクが風と共に巻き上げたせいで水かさが減っていた川も、朝日が昇りきる頃には元の水位に戻っていた。
 そして、茜色のあの光は、役目を終えると輝く赤い石となってリョウスケの大剣の柄にその居場所を固定した。黒い柄に金色の細工と赤い石がキラキラと朝日に照らされて、正に勇者の剣だ。
「『己の意思ではないが、己の犯した罪だから……』だとさ」
 火傷を治してくれた光の言葉をソウイチロウが通訳してくれた。
「クリスタルは互いの事は干渉出来ないって事かな?」
 だから、炎のクリスタルによって出来た傷を光のクリスタルの力じゃ治せなかったって事?
「そう考えるのが自然だろ?」
 “事実的にも、ゲーム的にも”と頷いたところで、
「次は、どこに行けばいいんだ?」
 ソウイチロウがユウタを見る。
「えっとね……」
 包み込むように添えられた手の中、クリスタルがフワリと浮いた。
「川下?」
 クリスタルはせせらぐかの如く、フワフワと宙に浮いている。
「とりあえず、川沿いに歩くか?」
 足が動くようになったリョウスケが先頭をいく。その左隣にサトルが並んだ。
「お前、心配性!」
 笑うリョウスケの横でサトルも笑っている。
 ふたりの真後ろにユウタが並び、ボクもその隣に並……ぼうとした瞬間、後ろから腕を掴まれて引き戻された。
「あいつは、どこの奴だ?」
 小声でボクに耳打ちしたのはソウイチロウ。自分が盲腸で入院してからというもの、院長である父も内科医である姉も外科医である兄も、様子を見に来るついでに打ち合わせまでソウイチロウの病室で済ませてしまう事があるのだという。
 てか、家族みんなが医師って、凄くない?
「兄貴や姉さんみたく頭良くないんだよ、俺は」
 そう言うけど、ボクに比べれば随分頭がいいと思うんだよね。
「第一、俺がなりたいのは医者じゃなくて……」
 口をつぐんだソウイチロウの顔を覗き込む。
「俺の事はいいんだよ!」
 そう言って話を戻す。その打ち合わせのお陰で新しい入院患者の情報はバッチリなのだと。リョウスケの事もサトルの事も知っている。ボクに関しては常連だし、何より、
「院内学級!」
 “覚えてないか?”と小突かれて思い出した。やって来て一日で来なくなった奴だ! 何学年かの合同クラスになるせいで、どうしても授業レベルが低くなってしまう。だから、行くのをやめたのだと……。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒