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「声! 精霊の!」
「はぁ!?」
 首を傾げるボクらに、ソウイチロウが自分の額を示す。メガネの上。前髪に隠れたその額に光る細い金冠。
「お前を助けてくれて、ありがとう。って……」
 中央に輝くのは、赤い欠片。
「上品な、女の人の声だった」
 ――― 『リョウスケを助けてくれて、ありがとうね』 ―――
 それはまるでリョウスケの……。
「なに、ナニ、何!?」
 呆然とするボクらを正気に戻したのは、斜面たもとにいたユウタの声だった。慌てて駆け上がると、そこには朝焼け色の光に包まれているサトル。
「なんだ、これ?」
「ぼく、一生懸命、呪文唱えてたんだけど、サトルの火傷が治らなくて、ぼく、ぼく……」
 自分の力じゃどうしようもなくて泣きそうになったんだと、ボクらは悟った。
「そしたら、急に、光が来て……」
 ボクらの目の前で、サトルの火傷が治っていく。色が変わっていた肌が元の色になり、ぐったりしていたその指先がピクリと動いた。
「サトル!」
 ユウタが動き始めた手をそっと握った。
「……そ、じゃない」
 サトルが呟く。辛そうに眉を寄せて、微かに首を振る。手を握っているユウタがボクを見た。何のことか分からないボクは隣にいるリョウスケを見る。ボクの横で、リョウスケとソウイチロウが顔を見合わせていた。
「『リョウスケを助けてくれて、ありがとうね』」
 ソウイチロウが呟く。光がそう言っていると、リョウスケとふたりで頷く。
「……違、う……んだ……」
 ゆっくりと目を開けたサトルが、心配で覗き込んでいるボクらの顔を見回し、その視線をリョウスケで止めた。
「……僕、ただ、謝りたくて……」
 火傷が消え、ユウタが呪文を唱えるその横で、サトルが語り始める。
 自分で直接謝りに行こうと病室を抜け出したものの、あっさり見つかって連れ戻された。ひとり残った病室のベッドには、見たことのないゲーム機。新機種ならば、オンラインなのは当たり前だ。もしかしたら、父が自分のところと彼のところに置いたのかもしれない。そう思って電源を入れた。必要事項を入力したあとは、待ちきれなくてAボタンを連打。ゲーム内で会えるかもしれない彼を探す。もし会えたらパーティーを組んで、機会を見つけて謝ろう。きっと、彼は怒るだろう。でも、どうしても自分で謝りたかった。
「ごめんなさい。僕の靭帯、リョウスケにあげるから……」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒