CLOSE GAME
「全くだ! 泳げねーって言うから、慌てて飛び込んだらこれだもんよ」
リョウスケが笑……。ち、ちょっと待って!
「“慌てて”って、リョウスケ」
「お前、足は!?」
溺れるボクを見て、大急ぎで川へ来てくれたリョウスケ。
「ドラゴン、ぶっ叩いて……」
その足元に、
「ユウタの声と……」
赤い勾玉が光る。
「タカヒサの声が聞こえて……」
リョウスケが握り締めていた左手を広げた。角から外れた御守りを握っていたんだ。紐が切れた御守りは、その衝撃で三つに割れてしまったと言う。
『……炎の御子よ……』
リョウスケが飛び跳ねるように顔を上げ、辺りを見回した。
「どうしたの?」
傍にいたボクらは首を傾げる。
「なんか、聞こえた」
ボクらには聞こえない、誰かの声。それは優しく心に響く。
『……炎の御子よ。我らの……』
「我らの、使えるべき、主……」
リョウスケがボクらにも分かるように復唱してくれる。
「囚われし我らを、解放せし……」
何だか難しい言葉が並んでて、ボクはちんぷんかんぷんだ。
「……てか、何の事だ?」
あはは。リョウスケも同じみたい。リョウスケがソウイチロウを見る。ボクもそれに倣った。
「要するに、だ」
呆れたように溜息をついたソウイチロウがボクらに説明をしてくれた。
主が不在だった炎の精霊たちは、ある日、突然現れた支配者の手によってドラゴンの中に封印された。そこでは自分達の意思は働かず、ドラゴンの本能のみに反応して、あろうことか、森を滅ぼしてしまう羽目になったのだ。いくつもの森を焼いてしまったが、今回、主であるリョウスケが現れた事によって解放された。そして、これからは自らの意思で主に従う。
「……ってわけだ」
リョウスケの手の中、三つに割れた御守りの欠片はふたつになっていた。
「……『炎の加護』……」
リョウスケが呟く。その視線の先には足首に輝く勾玉の欠片。その輝きは、まるで命の鼓動のように瞬いていた。
「残った二個はどうするんだ?」
手のひらからひとつを摘みあげて、ソウイチロウがそれを空にかざした。
小さな赤い欠片が昇りはじめた朝日に照らされる。
「ぅわっ!」
欠片を通して反射した光にソウイチロウが目を閉じた。
「大丈夫?」
覗きこむと、そっと目をあけたソウイチロウがリョウスケの手を掴んだ。
「き、聞こえた!」
「何が?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒