CLOSE GAME
咆哮と共に炎がボクらを襲い、リョウスケの剣が振り下ろされ、
「その力、解き放て!」
川の水を巻き上げた風が竜巻となってドラゴンへと襲いかかった。
竜巻に飲み込まれた炎は、その水とぶつかり音を立てて白い蒸気へと変わっていく。赤い炎が蒸気になり、真っ白な霧が森を覆った。
「……消えた?……」
サウナみたいな霧の中、ユウタが小さく呟く。
「みたいだな」
リョウスケが大剣を背中の鞘に収めようと右手を振り上げた。その時、
「まだだ!」
ソウイチロウの声と同時に、赤い炎が一直線に飛んでくるのが見えた。炎の塊の中に金色の目が輝く。ボクとリョウスケを狙っているんだ。ボクは、リョウスケを突き飛ばした。動けないリョウスケをその場から退かすことしか頭になくて、迫り来る炎をよけたつもりが、その勢いでバランスを崩す。横には川。ボクの身体が川に向かって落ちていく。その一瞬の出来事が、スローモーションみたく展開された。
「タカヒサ!」
ユウタの声が聞こえる。
「この野郎っ!!」
リョウスケが倒れながらも大剣を振ると、飛んできたドラゴンの額に命中。金色の目が輝きを失い。赤い炎が四方に散るのが見えた。
同時に全身が水に晒され、ボクの身体が流れに飲まれていく。口や鼻から容赦なく水が入ってくる。喘息で息が出来ないのとは違った窒息感に、ボクは我に返った。
死にたくない!
戦い抜いてだって死にたくはない。友達が出来たんだもの。この世界だけかもしれないけれど、手を取り合って笑える友達が出来たんだもの。こんな事で、死ぬなんて!
「た……助け……」
流れの合間から顔を出して、やっとの思いで声を上げた。
「なに、あいつ?」
首を傾げるソウイチロウに、
「泳げないんだ、タカヒサ!」
ユウタがボクを指さす。
「マジかよ!?」
この声はリョウスケだ。バシャバシャと聞こえる水の音は、ボクのもがく音なのかな? ダメだ。意識が遠のいていく……。短い人生だったな……。思い出が走馬灯のように……。
“ゴンッ!!”
頭に鋭い衝撃を受けて、失いかけた意識が戻った。
「バカやってんじゃねーぞ!」
リョウスケの声が耳元で聞こえる。
「え?」
顔を上げるボクの後ろ衿が掴まれ、身体が水から引き上げられた。
「水深、20センチってとこかな? 溺れるか、普通?」
ソウイチロウが笑っている。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒