CLOSE GAME
そう言えば、ふたりと会った時にドラゴンの姿は見なかった。
「多分、行動範囲が限られているんだと思う。ま、ゲーム様々ってとこだ」
ソウイチロウがメガネを上げ……た瞬間、熱風がボクらを包み込んだ。サトルを囲んでいたボクらが振り返ると、
「悪ぃ。予測違いだったらしい」
引きつった顔のソウイチロウの向こうで、森が真っ赤な悲鳴をあげていた。
「足音は!?」
リョウスケが剣を軸に立ち上がる。
足音どころか、地響きさえなかった。あったのは、咆哮だけ。目の前で木々が炎のエサになっていく。
「来るなら来やがれ!」
動かない左足を軸に、リョウスケが大剣を構えた。
「左足を軸にすれば、少しは動ける。こっちに来たら、ぶった切ってやる」
武器を持たないソウイチロウとユウタ、そしてサトルを庇うように立つリョウスケの隣に、
「手伝うよ」
ボクも並んだ。弓矢では対抗出来ないだろう。でも、風なら、何か役に立つかもしれない!
荒れ狂う炎の中、ボクらは本体を探した。
「本体はどこだ?」
ソウイチロウが目を凝らす。と同時に、フレームの星がキラリと光った。
「いねーよ、そんなもん!」
「来るぞ!」
その声と同時に、炎が一筋、ボクらめがけて伸びてくる。
「こなくそっ!」
リョウスケの振り下ろす大剣に合わせて、
「風よ!」
風を剣の風圧に乗せた。大剣の一振りが一陣の風を巻き起こし、炎が散らばっていく。
「この炎自体が……」
後ろからソウイチロウの声。散らばった炎が森を焼き続けている炎へ戻っていく。
「……ドラゴンの本体だ!」
戻ってくる小さな炎を取り込んで、森を覆っていた炎がひとつの形へと姿を変えた。あたり一面を振るわせる大きな咆哮が響き渡る。随分と怒らせちゃったみたいだ。
「リョウスケ。タカヒサ」
ソウイチロウが、次の攻撃に構えていたボクらに寄ってきた。
「……で、……な」
ドラゴンに聞こえないように耳打ち。
「おう!」
「わかった」
頷くボクら。
炎のドラゴンが大きく口を開けた。
同時にリョウスケが剣を振り上げ、ボクが手を組む。
「一発で決めるぞ!」
「翠の風、蒼の風……」
ドラゴンの口に炎が沸くのと同時進行で、リョウスケの剣に風が集まっていく。
「1・2の……」
「遥かなる空を……」
風が剣を中心に渦を巻き、炎がドラゴンの口から溢れ始める。
「3!」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒