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 ボクもソウイチロウも間に合わない。叫んだ途端、リョウスケの驚く顔が見え、その姿が炎に包まれた。駆け寄ろうにも、炎の勢いが強くて近付けない。
 ボクらは仲間をひとり、失った。
 この世界での“死”は、現実世界での何を意味するんだろう? そのまま戻れるのかな? それとも、現実世界でのケガや病気がこの世界に反映されているのと同じで、戻っったとき“死”は受け継がれるのかな?
 ボクは自分の考えにゾッとした。
 ここにいれば、発作は起こらない。だから、喘息で苦しまなくていい。苦しい喘息がなくて、友達がいる。ボクがベッドの上で夢見ていた世界がここにある。だから、ここにいてもいいかな……なんて思い始めてたんだ。だけど、ゲームオーバーにならずにい続けるって事は?死ねない?って事で、逃げ続けるか戦い続けるかしか出来ないって事で……。ボクはゲームのキャラクターなんかじゃなくて、ちゃんと生きてて……。
「リョウスケ!?」
 叫ぶソウイチロウの声でボクは我に返った。炎が引いたその場所に、銀色の盾が輝いていた。あの盾は……。
「サトル!?」
 猛ダッシュで盾のところへ走る。
 うずくまるリョウスケを包み込むようにサトルが抱きかかえていた。
「こ、こいつが、飛び出してきて……」
 胸に御守りを握り締めたリョウスケが目にいっぱいの涙を浮かべてサトルを指した。
「こいつ、俺に、“ごめん”って……」
 リョウスケの頭を駆けつけたユウタが撫でている。ユウタの目も涙でいっぱいだ。
「とにかく、ここを離れよう!」
 ソウイチロウがリョウスケからサトルを引き離し、抱きかかえた。サトルは、腕と足を火傷して気を失っている。
「ドラゴン……」
 リョウスケに肩を貸そうとしていたユウタが、ボクらの真後ろを指差した。ドラゴンは第二波を放つべく口に炎をくすぶらせている。
「タカヒサ、少しの時間でいい。あいつの炎を風で反らせ!」
「え!?」
 ソウイチロウは言うけど、そんな事したら森が焼けちゃう。
「あいつの身体に向かってだったら、木は焼けない!」
 炎を反らす事で、あいつが怯んだ隙に逃げるつもりなんだ。
「分かった!」
 逃げる四人を庇うように、ボクはドラゴンの正面に立ちふさがった。
 ドラゴンの口が微かに開く。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒