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 咳き込むこともなく、無事にドラゴンの背後に到着。丸くなって眠っているその角を狙いやすいように、辛うじて燃え残っている木によじ登った。できるだけ上に行って、太目の枝に移って、ドラゴンの角に狙いを定める。
「……風よ……」
 弓を引くその手首に光る篭手に念じる。この矢を角を掠めて、ふたりの手元まで届けて欲しいと。
 吸い込んだ息を止めて左手で狙いを定めて、右手で弓を引く。篭手からの風が弓と矢へ流れを変えるのが分かる。大丈夫。きっと、出来る!
“シュッ!”
 夜の闇を切って、矢が一直線に御守りに向かった。
「よしっ!」
 ドラゴンの向こうでふたりの声が聞こえる。予定ではふたりの手前で足元に落ちる感じで矢を放ったんだけど、どうか、そこまで……。
“グルルッ!”
 暗い森の中、低い唸りと共に一点が金色に光った。ドラゴンの瞳だ! 風を切る音、角を掠める矢、ふたりの声で目を覚ましたんだ!
 急いで木から下りて、ふたりの所へと急ぐ。だって、ふたり共、武器を使えない。
 更に低く咆哮が響き、金の目をしたドラゴンが瞬く間に真っ赤な炎に包まれた。真っ暗だった森が、赤く照らし出される。
 ドラゴンの向こうにふたりが見えた。飛び出そうとするリョウスケをソウイチロウが必死に抑えている。
「御守りが!」
 リョウスケが手を伸ばして叫んだ。真っ赤な炎を映して真紅に輝く勾玉。矢に引っかかって飛んでいた御守りが、ドラゴンの炎でその紐が切れ落下していくのが見えた。ボクの位置からじゃ全然届かない。もう一度、矢を放って……。そう思って背中に手を伸ばしたその時、リョウスケがソウイチロウの手を振りほどいて大剣を軸にして地面を蹴った。リョウスケの身体がまるで棒幅跳びのように宙を舞う。あと少し! 大剣を手で押して身体と右手を精一杯伸ばすリョウスケの手の中に赤く輝く勾玉が落ちた。
「……祖母ちゃん……」
 御守りの入った右手を左手で包み込んで倒れこんだ身体を起こす。そんなリョウスケの背後で地を這うような唸り声がして、ボクらは同時に顔を上げた。
 ボクが見たのは、身体の炎を震わせているドラゴンの姿。ソウイチロウからは炎を口に含んだドラゴンの顔が見えたんだと思う。
「「リョウスケ!!」」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒