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 そう言って、メガネを外して見せた。フレームの隅に星のマークが入っている。
「夜になって気が付いた。暗闇でも、昼間と同じように見える」
 ボクにかけて見せるけど、普通のメガネだ。むしろ、度が強すぎてクラクラする。
「これ、ソウイチロウのだよ」
 ボクはメガネを返した。
「きっと、ソウイチロウにしか使えない」
 だから、自分のことを“おまけ”だなんて言わないで欲しい。そう思って笑顔を向けると、気付いたのかな、ソウイチロウがボクの頭をクシャとなでた。
「森に入るぞ」
 リョウスケが大きく深呼吸する。同時に、風がどこからか熱を運んできた。
「覚悟しろよ、タカヒサ」
「この奥に、ドラゴンがいる」
 そう。ドラゴンが……ドラゴ……。
「えぇえ!?」
 驚いて出した大声に、ふたりの手が同時にボクの口を塞いだ。
「落っこちてきた時に、そいつを起こしちまった」
 元の世界から落ちてきた所が、ドラゴンの頭の上だったらしい。眠っていた深紅のドラゴンは、その衝撃に怒り、全身を炎で包み、火を吐いた……と言うのだ。
「まさしく“ゲーム”だよな」
 やれやれと溜息をつくソウイチロウ。
「御守りは、そこ?」
「多分」
 頷いたリョウスケが森の奥をみて言った。
「なんとか隙をみて、取り戻したい」
 大好きなお祖母さんからの贈り物だもんね。
「で、どっち?」
 森の中をあっちとこっちを指さしてふたりを見る。
「オレは強引に連れ出されたから……」
 リョウスケに睨まれて、ソウイチロウが目を凝らした。
「逃げて来たのはこっちだと思うけど……」
 ソウイチロウの指す方を見て、様子を窺おうと背伸びをしてみる。すると、また、
「風?」
 ボクらの周りで風が温かい空気を運んでくる。
「こっちだね」
 ソウイチロウの言った方向を示すボクに、
「“風使い”、ね」
 ふたりが顔を見合わせた。
 木々のくすぶるような臭いに向かって、ボクらは歩いた。出来るだけ、そっと。音をたてないように、ゆっくり進んでいく。
 やがて、緑の匂いが消え、焦げ臭さだけがあたりに漂い始めた頃、暗闇に光る炎を見つけた。
 眠っている所為か、怒りが治まっている所為か、その深紅の身体からは炎は出ていなかった。炎のような赤い鱗が全身を包んでいる。ボクらが見たのは、その吐息だった。吐息と一緒に、炎が小さく吐かれていたんだ。
「ありそう?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒