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「色々調べたみたいだぜ。事故の張本人が“靭帯の移植が必要なら自分のを使ってくれ”って訴えたらしい。慌ててあれこれ検索して、この方法を見つけ出した。ただし、元通りになった例は、まだ、ない」
「どういうことだ、それ?」
「再起を賭けて手術。リハビリ。それでも、全くの元通りの活躍をしている選手は未だ存在しない」
 野球選手、サッカー選手……。色んなスポーツ選手に前例はある。入院中、ちょくちょくテレビでもやっているのを見たことがある。
「結局、ダメなんじゃねーか!」
 リョウスケの足が止まった。
「手術しても、リハビリしても、結局……」
「違うよ、リョウスケ!」
 そう。既成の症例とは違うところがひとつある。
「今まで手術を受けた人たちは“大人”だけど、ボクらはまだ“子供”だ!」
 筋肉も骨も能力もまだまだ成長するはず。
「全部、一から始めれば、きっと出来るようになるよ!」
「“一から”なんて、今更……」
 ボクはサッカーの事なんて分からない。だけど……。
「最初から決めてたら何にも出来なくなる。前例がないのなら、リョウスケがその前例になればいいじゃないか!」
 びっくりしたような顔が、しわくちゃの笑顔になっていく。
 最初から諦めてたのは、ボクも同じ。喘息は治らないと決めてかかってた。でも、サトルが背中を押してくれた。ボクひとりで出来ないのなら、一緒に頑張ろうって言ってくれたんだ。
「リハビリなら、俺もちょくちょく顔出せるぜ」
 ソウイチロウがリョウスケの肩を叩く。
「ボクも! どうせ、入院生活だし!」
「お前は、喘息をなんとかしろよ」
 メガネを上げるソウイチロウに、
「するけど! リョウスケのにも付き合うの!」
 イーッと顔をしかめるボク。そんなボクらの真ん中で、
「……ありがとう……」
 リョウスケが呟いた。

  
 この世界に電気なんてない。だから、夜は本当に“闇夜”になる。所々に生えている夜光キノコと月明かりだけが頼りだ。そんな道なのに、ソウイチロウはサクサクと歩く。まるで道が見えてるみたいに。
「道? 見えてるけど?」
 川に架かる大木の橋を渡ったところで、ソウイチロウがメガネを上げながら言った。
「“おまけ”の俺にも、ひとつくらいアイテムないとゲームが成り立たないんじゃないの?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒