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 言いながら、昼間背負っていた大剣をリョウスケへと差し出す。
「これは?」
 ソウイチロウの長い上着には不釣合いな大きな剣。
「こいつんだよ」
 ソウイチロウが親指でリョウスケを示す。
「逃げるのに手間で、俺が持ってただけ」
 実際に抜こうと思ったら、重くて抜けなかったらしい。
「エクスカリバーみたいなもんだよ」
 ゲームの世界だから、その持ち主にしか使えない。そう言えば、ユウタのクリスタルもボクの篭手も持ち主にしか反応しなかった。
「さしずめ“ソルジャー”だな、リョウスケは」
 黒く光る甲冑と大きな剣。まさにそうだと頷く。それじゃ……。
「ソウイチロウは?」
 ボクの問いに、ソウイチロウが困ったように眉を寄せる。
「さぁ?」
「“さぁ”って」
「俺は“ついで”だから」
「なに、それ?」
「本命はリョウスケで、俺はおまけみたいなもんなんだよ。なっ!」
 リョウスケがプイとそっぽを向いた。
「ふたりはどうする?」
 ソウイチロウが洞穴を指して言った。
「さっき、泣かしちまったからな……」
 リョウスケが頭を掻いて振り返る。お祖母さんの事にしても、ユウタの事にしても、本当は優しいんだな。
「いいや。寝かせといてやろうぜ」
 言葉遣いが乱暴だから誤解を受けるだけなんだ。
 ソウイチロウから受け取った大剣を両手で持ち、それを杖代わりにしてリョウスケが歩き始める。
「両手装備の大剣なんか、足が使えなきゃなんの役にも立たねぇ」
 まるで自分自身の事を卑下しているようで、聞いてるボクの方が辛くなる。
「手術すれば、動けるようになるんだよね?」
 リョウスケの横に並んで歩調を合わせた。
「日常生活程度にはな」
 吐き捨てるように答えるリョウスケ。
「サッカー、本当に出来なくなるの?」
 ボクには“出来なくなる”ようには思えない。ボクを睨みつけるリョウスケの向こうから、
「骨折が治り次第、靭帯の手術をする。損傷したのは膝の十字靭帯。腿の靭帯の一部を代用することで再生は可能だ」
 ソウイチロウが答えた。ボクと一緒に、リョウスケまでびっくりしてる。
「手術費は、事故の加害者が全て負担してくれるとさ。執刀医は、常葉の院長。俺の親父だ」
「なんだよ、その話!」
「ソウイチロウ、院長の息子なの!?」
 同時にふたつの質問を投げかけられて、ソウイチロウが肩をすくめた。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒