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 歩き始めて間もなく、空が茜色に染まり始めた。三人でいた時には気付かなかったけど、どうやら、この世界でも時間の経過はあるみたいだ。
「あのまま三人だったら、気付いた時には“夜”だったね」
 歩きながらコソッと耳打ちするユウタに頷いた。太陽が傾いてから日が暮れるまでの時間はとても短い。ユウタの言う通り、三人だったら今ごろ大慌てしていたに違いない。そう思いながら、前を歩く三人を見る。ユウタの前、前列の左にメガネ。真ん中に黒×深紅。右にサトル。ボクの目の前で、サトルの背の盾が月明かりに照らされる。自分の右腕が動かないのに、なんの躊躇いも無く手を貸すサトル。まるで本当の“ナイト”のようだと思った。対照的に、メガネの背には大きな剣が背負われている。鞘と柄になにか細工がされてるけど、月明かりではよく分からない。でも、まるでローブのような長い上着を羽織っているその姿には、背中の大剣は不釣合いだ。そして、真ん中の黒×深紅の衣装をまとった奴。サトルの白銀の胸当てとは対照的な黒光りするその衣装は、甲冑のようだった。盾の装備が見当たらないから、その分、守備を固めた衣装になっているのだろう。武器は……。前に付いているのかもしれない。後ろからは見当たらなかった。
「あれ?」
 そして、ボクは気が付いた。どうして、メガネがこいつを担いでいたのか。サトルが手を貸したのか。どうして、口では抵抗しながらも逃げ出そうとしないのか。
 背の高いメガネに引きずられながら、サトル側の右足だけがピョンピョンと小さく跳ねるように動く。左足が動かないんだ。
 そっと左隣を見ると、ユウタが頷いた。どうやらユウタも気付いたみたいだ。
 ボクらは黙って歩きつづけた。
 右手に川、左手に木々の生い茂る斜面。辺りが真っ暗になった頃、メガネの足が止まった。
「あそこ、入れそうじゃね?」
 メガネが指さすけど、暗い斜面には木々の陰しか見えない。それなのに、なんの迷いもなく、メガネはサクサクと歩いていく。暗闇の中、所々に光るキノコと月明かりに照らされるサトルの盾を必死に追うボクとユウタ。
 やがて、ひときわ真っ暗な場所に辿り着いた。
「ここ!」
 そう言ったかと思うと、ボクらを残してメガネの姿が消えた。
「その辺の光るキノコ、集めてくれ」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒