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 その迫力ある表情と声に、ボクらは慌てて橋を戻った。ユウタが先頭で、服を引っ張られてボク。そのボクに手を引っ張られてサトル。行きの倍以上のスピードで戻るボクら。あっという間に、元いた岸へと到着した。
「ここまで来れば大丈夫かな?」
 メガネが、担いでいた黒×深紅を肩から下ろしてフゥと息をつく。
「仲間?」
 ユウタにそっと耳打ち。その胸のクリスタルが頷くように一瞬だけ輝いた。
「“仲間”みたいだよ。サトル」
 振り返ると、サトルが目を見開いて、今来たふたりを見つめていた。言葉もなく、ただ、驚きと不安が混じったような顔をして。
「サトル?」
「知り合い?」
 ユウタの言葉に、サトルの眉がピクンと動いた。
「ううん。知らない」
 なのに、ボクらへ向けた笑顔は、いつものサトルだ。
「で?」
 メガネがボクら……ていうより、ボクに向かって指さした。
「お前ら、何?」
「“何”って」
 ユウタと目が合い、頷く。
「ボクはシーフ。彼はヒーラーで、そっちはナイト」
「ちっ!」
 ボクの言葉にメガネが舌打ちした。
「とんちんかん!」
 眼鏡の真ん中を右手の中指で上げながら、見下すように言葉を吐き捨てる。
「俺が聞きたいのは……。てか、ここじゃ落ち着かないな」
 チラリと見たのは向こう岸。何があったんだろう?
「お前ら、どっちから来た?」
 ユウタが川下を指さした。
「じゃ、こっち行くぞ!」
 そう言うと、さっき肩から下ろした黒×深紅の左腕を掴んで歩き出す。
「ちょ! 離せよ!」
 引きずられながら抵抗する黒×深紅。
「お前らも来い!」
 それを無視して、ボクらに指図する。
 突然の指示にボクら三人が顔を見合わせていると、
「そろそろ日が暮れる。ぼーっとしてると、なんか出てくるんじゃないのか?」
 意地悪そうに、ニッと笑った。その言葉に半べそになったユウタが慌てて後を追う。
「行こう」
 それを追いかけるようにサトルがボクに声をかけて、メガネの横に並んだ。
「手伝うよ」
 そう言って、黒×深紅の右腕を自分の肩に回す。
「触んなよ!」
 抵抗するそいつの身体を左腕でしっかり掴んで、
「……ごめん……」
 サトルが小さな声で謝った。
 それが奇妙な間で、ボクは首を傾げつつユウタに並んで更に川上に向かって歩き出すのだった。

  
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒