CLOSE GAME
腰をさすりながら斜面を見上げると、ユウタが、ユウタなりに急いで下りてくる姿が見える。
「違うんだ。うさぎみたいなのが、足元を……」
慌てて言い訳して、
「ごめんね……」
慌てて謝る。そんなユウタを見て、ボクとサトルは顔を見合わせてクスリと笑った。そんな顔されたら、怒れない。
「ユウタってば、すぐに半べそになるんだもんな」
差し出されたサトルの手を取って立ち上がるボクに、
「そ、そんな事、ないもん!」
ユウタが、ぷっと頬を膨らませた。
「とりあえず、道は合ってそう?」
サトルが確認する。ユウタのクリスタルは首から下がったままだ。
「ん……とね」
ユウタが自分の胸元に視線を移すと、ふわりと浮く輝くクリスタル。ボクのクリスタルがボクにだけ風を送り込むのと同じで、ユウタのクリスタルはユウタの意思にしか反応しない。
「うん。大丈夫」
斜面を転げ落ちたボクらは、クリスタルの指す方へと再び歩き出す。細い木々の間に花が見え隠れする道。ずっと下り坂だった地面が、ずい分平坦になっている。ふもとに下りたという事なのかな?
「水、の音?」
呟いたと同時にユウタが走り出した。ボクとサトルも後を追う。いっぱい歩いたから、喉がカラカラ。水が飲みたかったんだ。
「川だ! 川だよ!」
先に辿り着いたユウタが手招きする。
穏やかな流れが太陽に照らされてキラキラキラキラ。時々イレギュラーで光るのは魚の背びれかな?
「きれい……」
せせらぎと森と空の絶妙なバランスに微笑むユウタの横で、
「飲んでも大丈夫そうだね」
現実を踏まえたサトルが頷く。正反対の行動がおかしくて、クスリと笑うボク。
「なに?」
「おかしかった?」
「んーん」
ふたりの問いかけに首を振って、?水を飲もう?と川を指さす。三人で川原まで下りて、両手ですくって……。
「「「おーいしーい♪」」」
回復の水ではないけれど、元気が戻ってくるのがわかる。
「次は?」
「川上? 川下?」
真ん中に座っているユウタの胸元に目をやると、
「んーとね……」
クリスタルがふわりと川上を指し示した。
「川上、みたい」
「向こう岸を指してるよね」
「橋、あるんじゃないかな」
歩きながら川に橋が架かっていないかと遠くを見る。ここから見る限り、橋は見当たらない。
「なかったら、どうするの?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒