CLOSE GAME
ユウタの手の中でクリスタルが輝き始めた時、
「ちょっと待って、ユウタ!」
サトルが、組まれたユウタの手を掴んだ。驚いて顔を上げるユウタ。
「見て」
サトルが指さすその先に、緑色に光る“風の篭手”。
篭手を中心に風が流れ始め、その風がボクを包み込む。服が揺れ、髪がなびき、風が身体の中を通り抜けていく。
「ふーーっ」
通り抜けた風が深呼吸になって吐き出され、ボクは、気付いた。息ができる。喉の奥の違和感もなくなっている。篭手から送り出された風が、起こり始めた発作を一掃してくれたみたいだ。
「タカヒサ?」
心配そうに覗きこんでくるふたりに笑顔を向けた。
「発作、治ったみたい」
「“それ”の力?」
サトルが篭手をさす。
「うん、多分」
“風の篭手”。名前の通り、風をボクの身体に巻き起こし、厄介な発作を抑えてくれた。
「これがあれば、もう、発作は起こらない」
言い切ってみる、
「え?」
「……と、思う」
ものの、自信はない。
「篭手の石も“クリスタル”っぽいね」
言われてみれば、そんな感じだ。
「ひとりにひとつあるのかな?」
“だったら、次はサトルの番だね”とユウタが微笑む。
「都合良すぎだよ」
サトルが笑いながら、行く先を見た。
ここは崖の上。後ろは断崖絶壁だから、前に進むしかない。
「仲間、見つけなきゃね」
ユウタの言葉にペンダントのクリスタルが返事をするようにふわりと浮いた。
「あっちだって!」
「てか、ユウタ」
「一本道」
目の前のゆるい下り坂をボクらは笑いながら歩き出す。
下に広がる森から響く“森の守護者”の雄々しい咆哮が、ボクらを送り出してくれていた。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒