CLOSE GAME
ボクの後ろでシュンとなるふたり。
「……鳥さん……」
ユウタが鳥の首に抱きついた。
『マモラナケレバ、ナラナイモノ。キミタチニモ、キット、アル。コノタビデ、キット、ミツケラレル』
鳥の声が聞こえないふたりに、同時通訳する。
「“守らなければならないもの”?」
元の世界に帰るための旅なのに、と首を傾げるふたり。そう言っているボクもよく分からなくて、一緒に首を傾げていたりするんだけど。
『イッショニハ、イケナイカワリニ、コレヲ、キミニ』
片方の翼を広げた鳥がその生え際を嘴で探り、二本の羽を取り出した。
「ボク?」
“キミ”が自分だとは思っていなくて、驚くボク。
鳥の嘴には少しとがった形の白い羽と淡緑色の羽が一枚ずつ銜えられていた。嘴に促されて手を差し出すと、揃えた両手の上に羽が置かれ、瞬く間に目映い光を放つ。
「ぅわっ!」
思わず手を引いたのは、その光がボクの手にまとわり付いてきたから。
手のひらで光っていた羽が光の粒になり、手のひらを離れてボクの左右の手首を捕らえる。まるで手錠みたいで思わず手を引くけれど、まとわり付く光は手首を離れることなく、羽とは別の形へと変わっていく。白と淡緑色の対の篭手。飾りに付いている濃緑色の石が太陽の光を反射して、まるで、森の深緑だ。
『“カゼノコテ“ハ、カゼツカイノ、キミヘ……』
「……“風の篭手”……」
両手首を見つめるボクの前で、鳥が頷くように首を振っている。
ちょっと待って! 今、何て?
「“風使い”って?」
顔を上げたボクの目に、大きく翼を広げる鳥の姿が映った。
『グッドラック!』
見る間に緑の身体が宙に浮く。
「待って! “風使い”って、何?」
あっという間に飛び立った鳥にボクの声が届くはずもなく、崖の上には、ボクら三人が大きな樹の横に残されたように立っていた。
「“風使い”?」
サトルがボクの手首を掴んで呟く。
「って、鳥が言ってた」
頷いたボクを思い出したかのように咳が襲う。
「タカヒサ!」
ユウタが背中をさすってくれるけど、痰が絡んで、咳はひどくなるばかりだ。
「鳥の背中がまずかったのかな?」
サトルが首の付け根を軽く叩いてくれている。
「待ってね。水……は随分減っちゃったから」
ユウタがクリスタルを握ったまま、両手を組んだ。
「天の光……地の光……数多の……」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒