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 と、再び歓喜の雄叫びをあげた怪鳥が、また翼を大きく広げた。生まれてくる雛鳥のために、ボクらを料理するつもりなのかもしれない。
「岩……じゃない、卵の陰に!」
 サトルがユウタを引っ張って卵から滑りおりる。
 万が一のためにボクが先頭になって、卵の陰へと身を寄せた。
 来る!!
 そう思って、思わず身をかがめたその時、
『タスケテ……』
 頭の中で、誰かの声がした。
「何?」
 振り向いてふたりを見るけれど、
「何が?」
 ふたりの声じゃないみたいだ。
「今、どこからか声が……」
 ふたりに説明しようとした途端、大量の“記憶”が頭の中に流れ込んできた。まるで光の束が頭の中を通り過ぎたみたいに……。
 大きな二羽の鳥。真っ白な羽毛に淡いオレンジの嘴。その隣には、白に近い緑の羽毛に淡い黄色の嘴。寄り添うように佇んでいるのは、今ボクらがいる、この巣の中だ。白い鳥の下には、岩のような“卵”。幸せそうな光景が、瞬く間に一変する。黒い影が光を覆い、緑色の羽が赤く染まっていく。それでも、逃げることができない卵を身体の下に抱いて、頑なにその場所にとどまる白い鳥。やがて、白い肢体も深紅に染まり、その身体は闇へと消えた。
 ほんの一瞬の出来事。
「タカヒサ?」
 サトルの声でボクは我に返った。
「……違う……」
 今のは、卵の……卵の中の雛鳥の記憶。
「タカヒサ、どうし……」
「“飛ぶための羽”って、どこ!?」
 大きく広げられた漆黒の翼めがけて闇雲に矢を放ちながら、サトルに声を張り上げる。
「“風切羽”のこと?」
 ユウタがサトルの後ろから身を乗り出した。
「翼の内側」
 丁度、今、見えている側だ。
「端から数本だけど、鳥によって違うから正確な本数は……」
 サトルが翼を指さしながら続ける。
「助けるの、卵?」
「うん」
 頷いたボクに、
「タカヒサ!」
 ユウタが抱きつく。
「あいつの雛かもしれないのに?」
 サトルは相変わらずだ。
「違うよ。あいつの雛じゃない」
「どういうこと?」
「後で説明するから。……風切羽を見つけなきゃ」
 矢を構えるボクの両脇でサトルとユウタも目を凝らす。
「形とか色とかは……」
「色は大差ない」
「端から数本でいいはずなんだけど……」
 ボクの矢を払いながら、怪鳥がひときわ大きく翼を広げた。また、真空の刃を飛ばすつもりだ。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒