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 ユウタの声が響いた。振り返ると、ユウタが丸い岩のてっぺんで、岩をかばうかのように大きく岩にしがみついている。反対方向には、爛々と瞳を輝かせた怪鳥が大きく羽を広げていた。あのポーズは、真空の刃を飛ばしてくる合図だ。
「ユウタ!」
 サトルが階段になっている瓦礫を駆け上がり、ユウタの上にかぶさった。それと同時に、怪鳥が羽ばたき、その風圧が真空の刃となってふたりを襲う。
「ユウタ! サトル!」
 ボクは慌てて矢を放った。一本ずつじゃどうしようもないことは、さっきの攻撃でわかっている。だから、数本まとめて、一気に弓を引く。弱点なんかわからないから、とりあえず“目”を狙った。矢の塊が、一直線に怪鳥の目へと飛んでいく。
 そして、悲鳴にも似た咆哮。命中したんだ!
「ユウタ! サトル!」
 ボクは振り返らずにふたりのいる岩へと駆け寄った。
「大丈夫だよ」
 サトルの声がする。手足に傷はあるものの、背中にしょった大きな盾がふたりを守ってくれたみたいだ。それにしても……。
「ユウタ!」
「……だって、生きてるんだもん……」
 岩のてっぺんを睨みつけるボクに、ユウタが泣きそうな声で呟いた。
「“生きてる”って?」「何が?」
 サトルとボクが同時に疑問を投げかけると、ユウタがそっと身体を起す。
「ここ、見て」
 サトルがユウタの後ろから、ボクは瓦礫を登って横から、ユウタの指さしたところを覗き込んだ。
 ユウタの下、岩が少し割れている。
「これ、“岩”なんかじゃない。“卵”なんだ」
「「卵!?」」
 驚くボクらにユウタが微笑む。
「こうやってると、あったかいんだよ」
 大きな岩を抱きしめるように抱え込むユウタ。“ね?”と岩に微笑むと、
“コツッ”
 岩の割れ目から淡い黄色の塊が飛び出した。
「鳥……の卵?」
 嘴に見えるそれを見て、思わず、空に浮かぶ怪鳥に目をやる。
 まさか……。
「「あいつの!?」」
 サトルとボクの声が重なったかと思うと、耳をつんざかんばかりの咆哮が巣全体を震わせた。
「喜んでる?」
「よね?」
 ひょっとして、ボクらはこいつのメインディッシュなのかな?
「違う、と思う……」
 ユウタが卵の中から飛び出している嘴と怪鳥を見比べて呟いた。
「嘴の色が違うし、何より、喜び方が異様じゃない?」
「そうかな?」
「普通に嬉しそうだけど?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒