CLOSE GAME
「タカヒサ!」
真下からユウタの声。
「翼で真空を作ってるんだ!」
更に下からサトルの声。
「「よけて!!」」
って、言われても……。
見えない風を肌で感じる雰囲気だけで、右へ左へとよける。足を上げたり、身体をひねったり。弓を掴んだまま、両手でツルにしがみついて、どれくらい経っただろう……。不意に身体が浮いた。手にはしっかりとツル。という事は……。
“ドン”
考える暇もなく、ボクの身体は巣の中へと戻っていた。そう、掴まっていたツルを切られたんだ。
怪鳥が両翼を大きく広げて雄たけびをあげている。“してやったり”って感じ?
「タカヒサ! 大丈夫?」
倒れているボクの横にサトルの姿。
「ユウタ、は?」
落ちたのは一緒のはずなのに、ユウタの姿が見えない。途中でユウタのツルも切られたのかもしれない。
「ユウタ!?」
「どこ!?」
怪鳥に身構えながら、ユウタを探す。
「こ、ここぉ」
少し上からのユウタの声。ボクらは巣の中を見回した。
「キャン!」
短い悲鳴の後、何かが落ちる音が響く。
「痛たたたた……」
丸い岩の下にツルに絡まったユウタがいた。どうやら岩の上に落ちたらしい。てか、そこから更に落ちたみたいだ。全身に絡まったツルがクッションになって、たいしたケガはしていない。
「大丈夫?」
駆け寄るボクらに、
「うん。大丈夫」
腰をさすりながら、ユウタが岩を見上げた。
「この上に落ちたんだけど、何かに、突き上げられて……」
「“何か”って?」
顔を見合わせたボクとサトルも岩を見上げる。
そして、三度響く、怪鳥の咆哮。慌てて構え直すボクとサトル。
「ユウタ、岩の陰に隠れて!」
サトルの言葉に、ユウタがツタに絡まりながらヨタヨタと岩の後ろに姿を隠した。
「タカヒサ」
サトルが今度はボクを呼ぶ。
「ん?」
「僕らの力じゃ、あいつを倒すのは無理だと思うんだ」
それは、ボクも同感だ。
「だから、せめて、飛べないようにしようと思うんだけど」
「“飛べないように”って?」
どういうこと?
「鳥って、飛ぶための羽があるんだ」
「翼があれば飛べるんじゃないの?」
首を傾げるボク。そんなボクらの会話を遮るかのように、
「だめーっ!!」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒