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 ツルの量が減って、崖の上に生えているであろう樹の根っことデコボコの岩が手元に広がる。すぐ近くに突き出ている部分を見つけたけれど、もう少し手を伸ばしたところにある大きな突起の方が楽かと思って、そっちに手を伸ばした。同時に、崖に風が吹く。
「タカヒサ!」
 下からサトルの声。
「急がなくていいから、安全なコースを選ぼう!」
 その言葉に、伸ばしていた手を引き戻し、目の前の出っ張りに手を掛けた。と、今度は突風がボクらの身体を揺らした。
 突然の風に、
「うわっ!」
 ボクとサトルはツルにしがみついた。
 ツルをしっかりと掴んでいる腕の隙間から下を見ると、ボク同様にしがみついているユウタの姿が見えた。更に下を見ると、岩の上のサトルが、
「チッ!」
 腰からロングソードを抜いたところだった。
「サトル!?」
「頭、低くしてて!」
 サトルに言われるまま、ボクとユウタは頭を抱え込むようにしてツルに掴まったまま丸くなった。訳がわからないボクの上を大きな影が覆う。サトルが、丸い岩の上で剣を構えた。甲高い咆哮と共に風が強くなる。
「……この、声……」
 聞き覚えのある咆哮に視線だけをそっちに向けると、戻ってきた怪鳥の姿があった。この風は、怪鳥の羽ばたきからくるものだったんだ。
「ユウタ! しっかり掴まってて!」
 動くだけで身体を持っていかれそうだ。ボクはユウタに声をかけると、右手を肩越しに背中へと伸ばした。サトルの武器は“ロングソード”。空に浮かぶ怪鳥に対抗するには無理がある。不安定な足場を少しでも補うため、足を動かしてツルを何重にも絡めながら、ボクは弓矢を構えた。
 怪鳥は、ボクたちが逃げようとしているのが気に障ったらしく、再び咆哮を上げると物凄いスピードでボクたちに……いや、巣から一番離れているボクに襲い掛かってきた。
「タカヒサ!」
 矢を引くボクに、剣の届かないサトルの援護が入る。長い刃に太陽の光を当てて、それを怪鳥の目めがけて反射させたのだ。背にしていた筈の太陽の光に目が眩み、怪鳥の勢いがそがれた。その瞬間を狙って、連続で矢を放つ。
 目・額・嘴。次々と矢がヒットするけど、大きな怪鳥にこんな小さな矢じゃ、致命傷を負わせることはできない。
 一瞬ひるんだ怪鳥が体勢を立て直し、ボクに向かって大きくはばたいた。
“ヒュン”
 耳元を過ぎる風の音と共に、頬に傷ができる。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒