CLOSE GAME
ボクの問いに、ユウタが頷く。高い所が苦手なんだから、前と後ろに誰かいた方が安心するに決まってる。
そして、サトルは、右手が使えない。
「ボクが先に行くから、ユウタはボクの後をついて来て。ある程度まで上がったら、ふたりでサトルを引き上げる」
“いい?”とユウタに確認。
「タカヒサ、僕なら……」
「ダメだよ、サトル。右手、動かないんだろ?」
ユウタが“あっ!”と声を上げた。どうやら忘れていたらしい。
「これから戦わなきゃならない時が絶対にある。その時は、サトルの力が必要になるんだ。だから、ボクたちが出来る時くらい、ボクたちに任せて」
そう。ボクたちは、
「うん。ありがとう」
パーティーなんだから。
ツルを何本も繋いで、自分達の身体に巻きつけて、ボクたちは丸い岩の上に立った。
「行くよ」
崖なんて登ったことない。ユウタに言ったように見えて、実は自分に覚悟を促した。そんなボクにユウタが頷く。
「うん」
ユウタの顔から、さっきまでの半べそが消えていた。
「登れる! 絶対に大丈夫!」
ボクはシーフなんだから。
意を決して、まずは垂れているツルを掴む。絡み合ったツルに手足を掛けて登れるところまで登って、後は岩肌を登る。
「タカヒサ! そこ、右の方が!」
下からサトルが登りやすそうな個所を教えてくれる。ボクの登ってきた後を追って、ユウタも登ってくる。ボクとユウタの身体はツルでしっかりと繋がっているから、そこから伝わる振動で分かるんだ。繋がっている安心感と同時に、なんだか心も繋がってる気がして、ツルを掴む手に力が入る。サトルの声に導かれてツルを掴み、足を掛けて、少しずつ上へと移動していく。
「ユウタ、大丈夫?」
いよいよ岩に手が掛かり、緊張が走る。
「うん。平気!」
ユウタはまだツルの部分だ。さっきボクが掴んだツルを掴み、ボクが足を掛けたところに足を引っ掛ける。ボクの声に安心したみたいに、ニッコリと笑ったユウタ。その笑顔で“緊張”が“高揚”へと変わっていく。ボクを信頼してくれているユウタとサトルのためにも、ここは、ボクが頑張らなくちゃ!
「えー、と……」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒