CLOSE GAME
「むむむむむむ、無理っ!」
顔面蒼白のボク。
「ヤダ! 絶対、ヤダ!」
半べそのユウタ。
「とりあえず、タカヒサの発作を回復の水で抑えて……」
聞いてないね、サトル。
「だから、無理だって……」
「だから、ヤダって……」
「ね、タカヒサ」
拒否するボクにサトルが微笑む。
「ここに来るまで、弓矢の経験は?」
「ない、よ」
てか、ないでしょ、普通。
「僕も、ここで初めてロングソードを手にした」
“当たり前だけどね”と、サトルが笑顔で続ける。
「でも、使えたよね?」
言われてみれば……。
「だからね、登るんだって思えば、きっと登れると思う」
ここは、ゲームの世界だから。
「でも、ぼく……」
半べそのユウタが、ボクの腕にしがみつく。
あー……。“高所恐怖症”は、元の世界からなんだな、きっと。
「大丈夫だよ。僕とタカヒサがちゃんとついてるから」
「……でも……」
「“一緒に行く”って約束!」
戸惑うユウタにボクは精一杯の笑顔を向けた。怖がっていたら、ゲームは進まないんだ。
「三人で、元の世界に戻ろう」
ボクの笑顔に、サトルも微笑む。
「……うん。頑張る」
半べそのまま頷くユウタ。
そして、崖を登るべく、丸っこい岩のある岩壁側へと移動した。
ボクらの背丈ほどの高さの丸い岩がひとつ。その周りには、砕けた岩が散らばっている。
「ほら、ここ。階段みたいになってる」
そう言ってサトルが指さしたところを見ると、確かに、砕けた岩が段々に積み重なって、丸い岩のてっぺんへと続いていた。
「タカヒサ。岩の上から、そこに垂れ下がってるツルを取ってきて」
「了解!」
サトルのロングソードでは岩の上での動きが不安定になる。ここは、短剣を持ってるシーフのボクがなんとかしなくちゃ。
ボクはユウタから回復の水を一口貰うと、岩の階段を駆け上がった。
手の届く範囲にあるツルを引っ張り、長そうな物を切り落としていく。
結構丈夫そうだ。
「これを身体に巻いて……」
足元でサトルの声が聞こえる。ユウタとボクに説明してくれているんだ。
「で、登っていくんだけど、順番は……」
……って、ちょっと待って!
「ボクが一番! 次がユウタで、サトルは最後!」
「タカヒサ?」
切り落とした最後の一本を追って、ふたりの元へと飛び降りる。
「ユウタ、真ん中がいいだろ?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒