CLOSE GAME
戦ってもいないのに、ただ歩いてるだけなのに、そんな事で驚くほど体力を消耗してしまうボクの身体。これじゃ、役立たずの足手まといだ。
「ボクの事なら……」
「一緒に行くんだよ!」
ボクの言葉をさえぎり、ユウタがキッとボクを睨みつける。
「約束したじゃないか、一緒に戻るって」
「ユウタ……」
「折角パーティーを組んだんだから、ちゃんと付き合ってもらうよ」
「サトル……」
「三回目は、言わせないでよね!」
お互いに組んだ肩。首を真横に振って、コツンとユウタの頭がボクの頭に当たった。
「二回目なんだ?」
サトルがボクらを見る。
「驚くほど諦めが早いんだ、タカヒサってば」
「ふーん」
ボクをチラリと見たサトルがクスクスと笑い出す。
「なんだよ!」
「水竜と戦ってた時は、そうは見えなかったからさ」
「あれは……!」
あれは、ユウタだけでも逃がさなきゃって、思って。
ふと、陽が陰って会話が止まった。
「暗い……?」
「よね?」
「なんで?」
三人揃って振り返る。
「ひゃっ!!」
フワリと身体が宙に浮き、あっという間に草原が眼下に広がっていく。同時に、身体に食い込む固い棒。キョロキョロと辺りを見回して、ボクらは何かに掴まれていることに気づいた。
左右からの不自然な風圧、太目の枝のような……足。
「と……り……?」
呟きながらゆっくりと隣を見ると、左足に掴まれたユウタが泣きそうな顔で頷いた。
右足にボク、左足にユウタ。それじゃ、サトルは?
「ユウタ、サトルは?」
大きな鳥の足の隙間から大声を出す。
「あそこ!」
なんとか動かせる右手を精一杯伸ばして、ユウタが鳥の頭部を指さした。
黒い羽に覆われた肢体の先に赤茶色の大きな嘴。その先に、白い影が見える。白銀に光る胸当てと風になびくマントは、間違いなくサトルのものだ。
「サトル!!」
呼んでみるけど、この風の音じゃ、サトルの所までは届かない。
どうにかしようにも、この高さから落ちたりしたら、その場で『GAME OVER』だ。
こうしてボクらは、この怪鳥の巣へと運び込まれたのだった。
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「自力で下山、ってのは無理っぽいね」
枝でできた怪鳥の巣の壁からピョンと飛び降りてサトルが言う。
「……サトル、右手、痛くない?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒