CLOSE GAME
風使い
「……ぼく、高いところって……」
ユウタがボクにしがみついて震えている。
「高所恐怖症?」
ガッチリと組まれた枝の壁によじ登っていたサトルが、振り返りざま聞いてくる。
ここは、山の頂上……より、少し下の岩壁。
――――――――――――
森を抜けたボクらは背の高い草の生い茂る草原を歩いていた。先頭はユウタ。草の高さは丁度ボクらの背丈と同じくらいだ。それをかきわけながらクリスタルの示す方へと進んでいく。
「ひゃっ!」
時々、足元を小さな動物が走り抜けていくのに驚きながら、ユウタがゆっくりと歩く。
「うさぎに少し似てるね」
ビックリした後、照れ隠しをするかのようにユウタが走り去る動物を指さす。
「モンスターじゃないのもいるんだね」
頷いたサトルがボクの横にぴったりとくっついた。
「タカヒサ、平気?」
もう結構な距離を休む事なく歩いている。ボクの身体を気遣ってくれているのだ。
「うん。まだ、大丈夫」
言ってはみるものの、喉の奥が鳴り始めている。
「この草原を抜けたら、少し休もうね」
“ぼくもクタクタだもん”と、微笑むユウタにサトルが頷いた。
「遠足より歩いてるよね。ね、タカヒサ?」
サトルは言うけど、ボクは……。
「遠足、行ったこと、ない」
「え!?」
「ボク、入院ばっかで、学校へは……」
しゃべると、キツイ。
「タカヒサ?」
大きく動き始めたボクの肩をサトルの腕が支えている。
「か、回復の水、飲む?」
皮袋を差し出してきたユウタの手をそっと払うボク。
「タカヒサ!」
「これくらいなら、平気だから、それは、片付けて」
決して大きくはない皮袋。中に入っている水だって、そんなにない筈だ。使う量はなるべく抑えなきゃ。
「でも……」
「ほんとに、大丈夫だから、さ」
この程度なら、少し休憩すれば大丈夫なんだ。そう思って、ふたりに笑顔を作る。
「でも!」
ユウタは本当に心配性なんだから。
「じゃ、僕の肩につかまって」
サトルがボクの右に回るのを見て、ユウタが慌てて左側に付いてくれた。
「もう少し歩けば、きっと草原を抜けるから。そしたら、休憩しよう」
ボクとユウタが頷く。
「……ごめんね……」
思わず口をついて出た、一言。
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒