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 それを遮るかのように、氷柱が次々とボクらの足元に突き刺さる。間一髪でよけながら逃げるけれど、瞬く間に、ボクの息が上がってくる。
「ゴホッ……」
 咳と同時につまずいたボクのすぐ横に大きな氷柱が突き刺さった。
「タカヒサ!」
 ボクの背中に、ユウタがしがみつく。動けないボクを覆うようにピッタリくっついている。ボクを守ってくれてるの?
「ダメだよ、ユウタ」
 君が、危ない。
 ボクはユウタの腕を引っ張って、背中からおろした。
 ボクが残っても、この身体じゃゴールには辿り着けない。だったら、やっぱりユウタが残った方がいい!
 そんなボクの思いを見透かしたかのように、ユウタが無言で首を振る。
「“一緒”って、約束した!」
 強く言い切るその後ろから、再び氷柱が落ちてくるのが見えた。
「ユウタ!」
 ユウタを庇おうと引き寄せる。同時にユウタもボクを引き寄せた。互いに互いを庇おうとして、結局、ふたりでくっつく形になり、ボクらは逃げることも出来ずに目を瞑った。
 ボクらの真横を連続して何かが落ちてくるのが分かる。次は、きっと、直撃……。ゲームの中でも、直撃すると痛いのかな? ボクらは互いの手に力を込めた。
“シュッ”
 氷柱の風を切る音がして、
“ザ・ゴッ”
 いよいよ、氷柱が当たっ……た。
「……え?……」
 痛くない?
 顔を上げると、ボクと同じように驚いているユウタの顔。
 そして……、
「大丈夫?」
 後ろからの声に、ふたり揃って飛び上がった。
 ボクらの背後。直撃した氷柱の影だと思っていた所から、人の声が聞こえたからだ。
 おずおずと振り向くボクらの目に飛び込んできたのは、
「逃げるよ」
 茶色かかった髪と優しい笑顔。
 左手に持った剣で氷柱を払いながら、ボクらに逃げる方向を指し示す。
「立てる?」
 モンスターがひるんだ一瞬のスキに、剣を鞘にしまってボクの右に回り込んでくる。それに合わせるかのように、ユウタがボクの左脇にくっついた。
「走って!」
 言葉と同時に走り出したふたりに引っ張られて、ボクも必死に足を動かす。
 湖のほとりの草むらを抜け、それを囲むように並んでいる木々の間を振り返ることなく走る。思うように動かない足に草が当たる。
「ストップ!」
 伸びていた木々の群れを抜けたところで茶髪の声がして、ボクらはようやく足を止めた。
「タカヒサ、大丈夫?」
作品名:CLOSE GAME 作家名:竹本 緒