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道化師 Part 4

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ヒロの肩を抱き車に乗せる。夢遊病者を連れているようだ。俺も龍成も声を出す事さえ出来ず、静かに車は走り続ける。抱き寄せると微かに子守唄が聞こえる。ミユキがうなされた時に歌っていたメロディー、こんなに悲しい曲だっただろうか?ヒロは今何処を彷徨っているのか?ミユキと一緒なのか?
病院の駐車場にはサクヤと安城が立っていた。車が止まると駆け寄り声をかけようとして声を詰まらせる。
血だらけの姿で亮に抱かれるヒロは虚ろに瞳を揺らせていた。
「何があったんだ?」
サクヤのやっと出た声は掠れ、それだけ言うのがやっとだった。
運転席から降りてきた龍成が、ヒロを魁斗に預けようと思うとサクヤに言うなり抱き締めて大きく息を吐き出す。
「サクヤ、お前をまた一人にしてしまう。ヒロを魁斗に預けたら急いで帰ってくるから」
サクヤは龍成の背中に腕を回し抱き締める。
「俺は大丈夫だから、でも、早く帰って来てくれ」
少しだが弱音を聞けて龍成はサクヤの顔を覗き込み口の端をほんの少しあげ微笑んだ。
行って来ると告げ、俺たちの車はまた、闇の中を走る。今度は、ヒロがゆっくりと休める場所に。




ベットで眠るヒロは夢を見ていた。地面を覆い尽くす真っ赤な花、そこに立ち尽くすミユキ、赤い花びらが舞いミユキの体を覆い隠そうとしている。ミユキと叫ぶ俺の声に、さよならと微笑み背を向ける。
唯一緒にいたいだけなのに叶えられない。求めても手に入らないのなら、何もいらない、何も求めない。ミユキが俺をいらないと言うなら、この俺自身も俺はいらない。
一緒にいると離れないと誓ったはず、一人闇に取り残された俺、ミユキに愛されていたと信じたい俺は道化でしかない。
「僕のヒロ、僕だけのヒロ」
その言葉をもう一度聞きたくて笑顔の頬に一雫の涙を浮かべた道化の俺は、美幸の周りを踊る。
美幸に笑顔を浮かべてほしくて、優しい声で囁いてほしくて、闇に浮かぶ真紅の舞台で踊り続ける道化師。只々愛する者を欲して止まない哀れな道化師。
作品名:道化師 Part 4 作家名:友紀