道化師 Part 4
「地下室とかあるんじゃないかと探したが、そんなのなかった。ヒロが精神のバランスが壊れかけてる。あの頃のヒロより酷い状態だ」
俺たちは何をやってるんだと頭を抱え、悔しそうに唸る龍成。
いつ来たのか、サクヤが情けない俺たちを見下ろし
「お前達は何をしてるんだ、こんな所で肩を落としていても何も変わらないだろう、しっかりしろ!」
一番悲しい思いをしているはずのサクヤに叱咤され益々項垂れる龍成と俺。
「亮、ヒロとミユキは?」
「いないんだ、俺たちが行った時には誰一人も別荘にはいなかった」
サクヤの瞳に冷酷な炎が宿ったような気がした。
「どういうことだ?よく調べたのか?」
「調べたさ、安城達は誰も建物から出てないと言うから隅々まで探した。ヒロはおかしくなるし、どうなってるのか」
わからないんだと弱い姿をさらしている。
「ヒロは?」
「安城に頼んだ、気絶するように眠ってる」
「車に置いて来たのか?」
龍成の携帯が震え、安城からの着信に慌てて出る。
「どうした?」
『ヒロさんがいなくなって、そっちに行ってますか?』
「来てない、何をやってるんだ!」
携帯を切った龍成に鋭い眼光が戻り、殺気まで感じた。
「ヒロが消えた、別荘に戻ったのかもしれん。サクヤ、一人でも大丈夫か?」
「そんな心配は無用だ。早く行け」
龍成と同じように、俺はあんな状態のヒロを見ているのに耐えれなくなり安城に押し付け逃げ出してしまった。情けない男だ、もうこれ以上誰も傷ついて欲しくないのに、悪い方に一度転がり出した運命は変えられないのだろうか、不安で押し潰されそうになる。
ヒロは本当に別荘に向かったのか?確証は無いが、俺の腕の中で泣き叫んだ姿が目に浮かぶ。ミユキが待つ別荘に、それだけが今のヒロの頭には無いと。なんて長い一日なんだ、車が闇に吸い込まれている様な錯覚さえ感じる。
作品名:道化師 Part 4 作家名:友紀